僕にとって仕事、人生って面白いこと探しの旅なのかもしれない ー大森 南朋

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僕にとって仕事、人生って面白いこと探しの旅なのかもしれない ー大森 南朋
2017/11/01 (水) - 08:00
SELF TURN ONLINE 編集部

自分自身の可能性を信じ逆境を乗り越え、 成功を掴んだアーティスト、俳優、クリエイター達。 時代の表現者達が語るSELF TURNとは? 彼らのストーリーを通じて、「自分らしい生き方、働き方」を考える。

1回目となる今回は俳優、バンド・月に吠える。で活躍する大森南朋さんに話を聞いた。
大森南朋流の「生きがい」「仕事論」とは?

 

-大森さんはお父様が日本を代表する舞踏家・麿赤児さんなので、子供の頃から役者志望だったんでしょうか?

全然違います。ただ、父親が舞踏をやっているのは本能では知っていましたが、どのようにしてお金を稼いでいるのかは全く分かりませんでした。子供からしたら身体を真っ白に塗って、お化け屋敷みたいな感じなわけです(笑)。でも舞台を観に行かされたりしていたんで、どうやら父は向こう側の芸能界とやらにいる。ただ、テレビに出ていないから芸能人ではないのではという感じでしたから。

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-では、最初になりたいと思った職業は?

漫画家です。ほんとに漫画が好きで。ただしドラえもん好きとかそういうレベルの話で(笑)。教科書の後ろの隅によく漫画を描いていて、「大森くん、絵うまいね」とか言われて漫画家になりたいなって思っていました(笑)。でも小学校から中学校に上がる時にテレビで洋楽チャート番組『ベストヒットUSA』などを観て、ロックにハマってギターを買って。高1の時にバンドを組んでライブデビュー。そこからバンドにのめり込んでいたらバンドブームがちょうど終わり…世間的には「何?今バンドやってんの?」みたいな冷めた空気で、もう参りました(笑)。

-(笑)。

ちょうどその頃、俳優をやってみないか?と父親の当時のマネージャーから誘われて、バンドやりながらオーディションに行ったりしていました。俳優の世界は漠然と興味あるじゃないですか?どういう世界なんなんだろうと。しかも当時は小さいVシネマみたいな現場がたくさんあって端役でもなんでも呼んでくれるわけです。でも下っ端だから兎に角怒られますし、映画を作っている輪に全然入って行けないんです。この輪に入りたいなって。僕もあそこに入って、いい感じでいたいなって。今でもそんなことをやっている感じです。

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-役者をやるうちにバンドは諦めてしまった?

はい。29歳の時でした。その頃になると映画の仕事も増えてきまして、撮影のせいでバンドのメンバーに迷惑もかけていて、その事が原因で喧嘩して「バンド抜ける」と言って僕が抜けて、やがてバンドは解散しちゃいました。

-役者にシフトしていく時にバンドに対する未練はなかったですか?

もちろんありました。高校の時から毎週のようにバンドでスタジオ入ったり、楽器屋に行って弦買ったりしていた習慣が全くなくなっちゃうわけですから。心がゾワゾワしました。でもギターは持っていたから息抜き程度には弾いていましたけど。

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-不安じゃなかったですか?ずっとやってきた音楽は辞めたものの、役者としても確固たる地位があるわけじゃなく。

不安はあったんでしょうけど、漠然とした自信も持っていました。俳優で食べていけている人は苦労話とかあまりなくて、漠然と自信を持っている人が売れている気がします。消えていった俳優をそれこそ死ぬほど見て来ましたが、そういう人はすぐに弱音を吐いていました。不安なんだよ、みたいな感じで。そこに関しては僕は漠然と自信があった。でもお金は笑っちゃうくらいなかったですけど(笑)。本当にこれでやっていけるのだろうかと黄昏れたりした…そんな想い出もあります(笑)。

-激貧でも役者を辞めなかったのは表現する仕事がしたかったから?

そういう風に思って役者を始めてなくて、さっきもお話しした通り、映画でもドラマでもその輪の中で調子良くやりたいっていうすごく簡単な発想しかないんです。40歳を越えて、月に吠える。というバンドも始めたんですけど、それも、夏フェスに出たいな、ああいう仲間に入ってみたいなという感じですし。もう45歳なんですけど(笑)。死ぬまでこんな感じなんでしょうね。

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-(笑)。役者としてのターニングポイントっていつになります?

28歳の時の『殺し屋1』です。オーディションに行ったら受かりまして。それがメインで出た初めての映画でして、監督は三池崇史さんですし、トップスターの浅野忠信さんの相手役ですし、「やったぜ!」と思い、とりあえずバイト全部辞めてしまいました。そしたら撮影終わったら何もやることがなく、映画の出演料が入ってくるまでに時間がかかるので、お金も全然なくて(笑)。またバイト始めたんです。

-バイトをしないで食えるようになったのは何歳ぐらいですか?

31歳くらいです。テレビの昼ドラのレギュラーに決まってから食べれるようになりました。今思うと、どうやって食べていたんだろう(笑)。でもその頃は周りも同じ境遇の人ばかりで気にもならなかったんですけど。

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-金銭的な面ではなく、役者としての挫折もあります?

山ほどあります(笑)。演技が下手で、死ね!と言われたり。あと、何しに来てんだ!弁当食いに来てんのかコノ野郎!とか…。今の人に比べると僕が若い頃の映画人はほんと怖くて。よく蹴飛ばされてました。あと、メインの役でもない僕のせいで何十テイクも撮り直したこともあって。しかも、どこがダメかも言ってくれないんです。はい、もう1回!はい、もう1回!ってひたすら言われ続けて…。

-どの作品ですか?

『瀬戸内ムーンライト・セレナーデ』という映画で、巨匠の篠田正浩監督です。吉川ひなのさんと鳥羽潤さんと絡むシーンで、僕の演技がOKにならないから、とうとう「一回休憩する!」という事態になりまして。その時、監督を殴って帰ろうかなって思ったんです。でもそれじゃダメだと思い直してスタッフに聞いたら、「お前の芝居がダメじゃなくて、ダメなのは立ち位置だから。主役の顔を見せる芝居をしろ」と。で、それをやったら、一発OKに。それだけなら早く言ってよって思ったら監督への怒りが沸々と湧いてきて。撮影が終わって、マネージャーに監督に挨拶しに行けと言われて、一発くらわす勢いで挨拶しに行ったら、監督が「大森さん」って、僕の名前も覚えているだけじゃなく、「この度は本当にありがとうございました」と巨匠に頭下げられてしまい…。すごい勉強になりました。

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-役者って深いですね。

大分経ってから、何であんなにNG出されたんだろうって思ったんですけど、「お前の中でちゃんと何が駄目か判断してやれ」っていうことだと思ったんです。超大作でもない限り、普通そんなこと現場ではさせてくれませんから。そう思うと、すごく僕のことを買ってくれて、辛抱強く大森南朋という訳がわかんない輩を俳優にしてくれようとしてくださったんだなと思います。そういう粋な大人達に会って役者にとって大切なことを学ばせてもらって来ています。

-多くの社会人が年を重ねる毎に、現実と直面し少しずつ夢を諦めていくと思います。
先ほど話題に出ましたが、大森さんは、40歳を過ぎて「月に吠える。」というバンドを組んでミュージシャンとしても活動をスタートしました。これは、昔の夢をもう1回つかみ直すという感じですか?

そうです。やっぱり、バンド、音楽をやることをやり残していたような気がしていて。音楽をやるのに必要なもの、例えばセンスとか、そういうのがあるのかは分からないし、売れるかどうかも分からないですが、バンドやった方がいいって…自問自答の末、そう答えが出たんです。40歳過ぎて思ったんです、どうせ人間は死ぬんだ、と。死ぬ前にバンドやっておかないとすごくつまんなくなっちゃうなって。もちろん、俳優の大森南朋がバンドやってることに超ムカつくっていう人が居るのはわかっています。でも、そんな悪口全然どうでもいいんです。バンドやっている時、本当に楽しいので。

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-とは言え、撮影で多忙な中でバンド活動をやるのは簡単ではないでしょ?

はい。しかも音楽業界不況ですから(笑)。

-俳優だけやっていた方が確実に良い生活できるはずですよ(笑)。

俳優さんにも、ハワイ好きな人とか、すごいゴルフ好きな人がいますが、そっちの方がお金かかると思うんですよ(笑)。

-なるほど(笑)。で、実際どうですか?バンドと言う昔抱いていた夢を叶えてみて。

例えば、同じ放送局に行くのに、俳優・大森南朋として行くのと、バンド・月に吠える。で行くのだと待遇が違うんです。そういうのも含めて楽しんでいます。あと俳優とバンドって方法論が違うんです。俳優は、舞台でもカメラの前でも、相手の人と芝居をしている状況の中でその世界を繰り広げている中の一人なんですが、バンドはステージに立つとお客さんと向き合うどころか、話せちゃうぐらいなんです。役者とミュージシャンって似て非なるもので表現方法はかなり違うなと思っているので、バンドでステージに立つことが俳優の方にも役に立つようなことがある気がしています。具体的に言うと、嘘つかないで立つということが勉強になる気がしています。

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-なるほど。40代で音楽活動を始めた事が、結果的に俳優業にも良い影響を与えているんですね。
ビジネスパーソンの副業についての議論についても繋がる所がありますね。
大森さんは役者にしても音楽活動にしても仕事をしているというより、子供の頃のまま自分が楽しく居られる場所を探している感じがします。
仕事と人生、働く社会人にとっては永遠の課題ですが、敢えて大森さんにとって仕事と人生とは?

仕事=ご飯が食べれるという意味では、僕の仕事は俳優です。バンドはあくまで趣味とはいわないですが、やりたいこととしてやってく感じです。俳優ももちろんやりたいことではあるんですが、自分のままでという訳にはいきません。でも、その役にどこまでなれるかという挑戦も出来ます。むしろ、芝居でここまで変態になってやろうか、ここまでぶっ飛んで演じてみようかとも遊びに考えられるようにしていかないと嫌になっちゃうんで。だから現場では嫌になっちゃわないように面白いところ探しを続けています。心の中で助監督の顔見て笑ってたり(笑)。半分ギャグですけど、なんでもそういう風に面白くしていった方がいいかなと思ってるんです。

つまり、
僕にとって、仕事、人生って面白いこと探しの旅なんじゃないかなって思います。

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大森 南朋

1972年、東京都出身。01年、『殺し屋1』で映画初主演。以後映画を中心に、TV、舞台、CMに多数出演。03年の『ヴァイブレーター』、『赤目四十八瀧心中未遂』でキネマ旬報ベスト・テン助演男優賞、ヨコハマ映画祭最優秀助演男優賞を受賞。07年放送のNHK土曜ドラマ『ハゲタカ』の主演作品にて第33回放送文化基金賞・テレビドラマ部門出演者賞、08年エランドール新人賞、10年には主演映画『ハゲタカ』(09年)で第33回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。現在はさらにバンド『月に吠える。』で活動範囲を広げている。近年の主な出演作品に、【映画】『ヘルタースケルター』(12年 監督:蜷川実花)、『R100』(13年 監督:松本人志)、『捨てがたき人々』(14年 監督:榊英雄)、『寄生獣』(「PART1」14年「完結編」15年 監督:山崎貴)、『S-最後の警官-』(15年 監督:平野俊一)、『秘密 THE TOP SECRET』『ミュージアム』(16年 監督:大友啓史)公開待機作に10月7日公開『アウトレイジ 最終章』(監督:北野武)12月9日公開主演映画『ビジランテ』(監督:入江悠)【TV】TBS10月期連続ドラマ『コウノドリ』(演出:土井裕泰 他)。

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