『育児は育自』子育てから始まる新しいキャリアと伝承
久保田 一美
2017/10/05 (木) - 08:00

子どもという新しい家族が増えることで、夫婦の働き方は間違いなく出産前とは違ったものになります。子育てをすることを「育児」と言いますが、実際に経験すると、親こそ子どもに育てられている「育自」だということに気がつきます。そして、子育てを境に始まる新しいキャリアは自分自身の捉え方次第で広がりをみせるのです。

3年ごとにキャリアを考えてみる

社会人となって結婚や育児というライフイベントを迎えるタイミングは人それぞれですが、男性であっても女性であっても、特に子育てを境にしたキャリアというのは、少なからず何らかの影響があるものです。

独身時代の働き方、結婚してからの働き方、子どもが生まれてからの働き方は、そのステージごとに変わってきます。また特に子どもが生まれてからは、子どもの年齢が3歳、6歳、9歳、12歳のように約3年毎に親の働き方に影響を与える機会に遭遇します。

企業の制度でも、時短勤務ができるのは子どもが3歳になるまで、もしくは小学校に上がる前までであったり、地域や自治体が設置する学童保育を利用できるのは小学校3年生までであったりすることも多いでしょう。

また、個人差はあるものの、子ども自身も免疫力が付き始め、体が丈夫になるのは3歳頃であったり、身の回りのことがだいぶ一人でできるようになるのは6歳くらいだったりします。

このように、子育て期のキャリアとして、親も子どもも充実した毎日を過ごすためには、企業や社会の仕組みによるものと、子どもが心身ともに成長する具合に合わせて自分の働き方を3年ごとに見直すことのできる「チャンス」であるとも言えます。

子育てで成長するのは親自身

かつて筆者自身が独身だった頃、育児休暇中の友人宅へ訪問し、その友人が言った言葉が今でも忘れられません。その女性の友人も筆者自身も当時29歳だったのですが、「仕事と育児はどっちが大変?」のような話になり、友人は「育児の方が大変かも」と答えました。

友人も筆者も、会社においてはすでにベテランの域。お互いグループのリーダーとして仕事をバリバリとやっていた頃で、出産や育児をまだ経験していない身からすると、この言葉は青天の霹靂で、「仕事の方が絶対大変なはず!」と思っていました。

しかしながら、実際に30歳半ばで第一子を出産した筆者は、この言葉の意味が痛いほどわかりました。仕事に関しては自分の中で予測したり、解決したりできることも、子育ては思った通りにはことが運びません。

幼い頃の子どもの発熱は原因がわからないことも多く、不測の事態が起きること、時間通りには行動してくれないことなど、仕事のプロジェクト管理通りのようにはいきません。

一般的に子育てをすることを「育児」と言いますが、初めて子育てを経験すると、自分の不甲斐なさを感じることがある反面、未知な体験をすることによる視野の広がりもあり、実は親こそ子どもに育てられている「育自」だということに気がつきます。

子育て期はキャリア教育の基礎に

1年間もしくは人によっては数ヶ月のように育児休暇が短い方や、2?3年などの長い方まで、期間に関係なく子育てによるキャリアのブランクを経ると、復職する際に不安を感じる方が少なくありません。

しかしながら、思い出していただきたいのは、子育て中だからこそ自然に身についたスキルがあることです。

・限られた時間に大切なことを優先する段取り力
・子どもの様子や要求を見極める観察力
・家事や育児を並行してできるマルチタスク力

など、出産前には持ち合わせていなかったスキルがまだまだあるはずです。

こうした力は育児休暇を経て復職する際に、仕事や職場でも生かされる力だったりしますので、捉え方によっては、育児休暇はブランクではなく、新しいスキルを蓄える期間なのです。

また、夫婦ともに協力し合い、どちらか一方に負荷がかかる子育てではなく、

・保育所や学童に預けてまで働く意味は何か
・夫婦ともにお互いを尊重し合えるキャリアはどう築いていくか

このようなことをまず土台として考えることで、子育て期の途中で不測の事態になった時も、何かのせいにしたり、イライラしたりすることは少なくなります。

子どもは親のすることを良く見ています。そして、親の会話を良く聴いています。毎日の生活の中で、親が生き生きと自分らしく働くことが、家庭に帰ったときの笑顔となり、子どもとの関係も良好になります。

子どもの憧れの職業や、社会に出たときにどんな大人になりたいかのお手本は、一番近くにいる親であり、家庭そのものです。働いている親が、家に帰って不満顔をしていたら、子どもは社会にでることに対して希望も持てず、不安になるでしょう。

ですから、子育て期に親が笑顔で働いていること、自分らしく働くことは楽しいのだという姿を見せることが、子どもへのキャリア教育や家庭を築く基礎に繋がっているのです。

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