非日常の空間で、仕事と人生の “棚卸し” を――リラックスした雰囲気で、自分の本音と向き合う1泊2日とは。(前編)

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非日常の空間で、仕事と人生の “棚卸し” を――リラックスした雰囲気で、自分の本音と向き合う1泊2日とは。(前編)
2017/11/05 (日) - 08:00
神吉 弘邦

株式会社日本人材機構が展開する「SELF TURNプロジェクト」は、「自分が活躍し、輝ける仕事とは何だろう?」「自分の職業観に合った企業はどこにあるのか?」という問いを多くの人に考え始めてもらうキッカケをつくる試みです。今回、その一環として株式会社ハーティスシステムアンドコンサルティング、株式会社スノーピークビジネスソリューションズとともに、2017 年 10 ⽉ 27 ⽇と28日の2日間、愛知県岡崎市で「働き方ワークショップ OPEN COLLABORATION CAMP × SELF TURN Re Sort」を開催しました。

地方と都心、人と人が「つながる」ワークショップ

仕事やプライベートを充実させている時期にあるのが、30〜40代のビジネスパーソン。その半面、組織で与えられた責任、家族の将来……たくさんのしがらみの中に置かれています。目の前の課題をガムシャラに突破したり、複数の選択肢から間違いのない答えを選んだり。とにかく「今、こなすべきこと」が多すぎて、大切なことほど後回しにしがちではないでしょうか。

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岡崎市で開催された「働き方ワークショップ OPEN COLLABORATION CAMP × SELF TURN Re Sort」の会場

後回しにしてしまうのは、もしかしたら「自分の未来」。この際、いったん普段の生活から離れ、非日常の空間に身を置いて、自分の声に向き合ってみよう。そんな趣旨のイベントが10 ⽉末に催されました。

会場になったのは、愛知県の真ん中にある岡崎市です。温暖な気候で知られる旧三河国(西三河)にある40万人弱の中核市は、徳川家康が生まれた岡崎城もある由緒ある土地です。

八丁味噌などの食品産業や製材業といった伝統に根ざす企業とともに、自動車関連などのメーカーも多くあります。近年、暮らしやすさに惹かれてサテライトオフィスを設置する動きも生まれてきました。新幹線が停まる豊橋や名古屋からは、電車で約30分で着くのも便利です。

昭和レトロな駅ビルがかわいらしい名鉄「東岡崎」駅から3分も歩けば、岡崎城を望む乙川(おとがわ)べりに着きます。四季の移ろいとともに暮らしたい人にとって、ほっとする景色が広がっていました。

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岡崎の中心部を流れる乙川。観光船「乙川舟」が人気

岡崎市では2年前からリバーフロント地区整備計画として、水辺観光や歴史資源を生かした公民連携のまちづくり「おとがわプロジェクト」に取り組んでいます。この日も観光船やオープンカフェなどを多くの人が利用していました。

河川敷に目をやると、スノーピークビジネスソリューションズが設置した無数のテントとプロジェクター完備のワーキングスペース。ここが「働き方ワークショップ OPEN COLLABORATION CAMP × SELF TURN Re Sort」の会場です。気持ち良い初秋の風が吹き抜けるなか、野外のフィールドで頭と心をほぐそうとする狙いです。

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天気にも恵まれた1日目。午前は希望する参加者が岡崎の市街地や施設、オフィスを探訪

参加メンバーは約30名のビジネスパーソンたち。東京を中心とする県外からの参加者に混じり、地元企業からも同年代の社員が加わります。カジュアルな服装に身を包んでいることもあって、地域や組織の肩書きがあまり気になりません。1泊2日のスケジュール全体を通じて、あらかじめグループ分けを行わないのも特徴でした。

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最初に行われたのは、フューチャーセッションズがファシリテーターとなった「オープンコラボレーションセッション」。4〜6つのテーブルに分かれる際にも参加者の自主性に委ねられています。

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オープンコラボレーションセッションのファシリテーターを務めたのは、フューチャーセッションズの有福英幸さんと筧 大日朗さん

セッションでは「岡崎の魅力・特色」をテーマにディスカッション。3ラウンドが行われ、議論される内容も、参加者間の交流も、いい具合に “かき回され” ます。最後には各テーブルが「岡崎の魅力・特色を生かした新しい取り組み」を発表して90分のセッションが終了しました。

気がつけば、西の空は見事な夕焼け。「冷えてきたかな?」と感じたメンバーが上着をはおり始めた頃、焚き火台の薪に火がおこりました。

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非日常の空間へ、自分の感情に向き合う準備

日が落ちてからは、揺らめく炎を囲んで談笑タイム。ポトフやピザなどのキャンプ向きメニューを味わいながら、グラスをゆったり傾けます。自己紹介から自然に普段手がけている事業の話、やがてはお互いの人生設計まで。焚き火を囲むと、人は自然と素直な言葉が口をつくのかもしれません。

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ケータリングの料理は「秋のキャンプ」のイメージ。ホットワインやソーセージ入りのポトフなど、身体が中から温まるメニュー

今回のワークショップでは、仕事上に役立つ訓練やなんらかの成果を残すことより、むしろ「根源的なもの」をつかんで帰ってほしい、という意図を感じました。異なる分野の人たちと出会って発想を豊かにしたり、日常的な考えに「ブレ」をもたらすことに重きが置かれているため、プログラムはゆるやかでシンプルなのでしょう。

参加者たちがすっかりリラックスしてきた頃、ステージにはスペシャルゲストとして「JUN SKY WALKER(S)」のボーカリスト、宮田和弥さんが登場。会場の雰囲気が再び、熱を帯び始めました。

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宮田さんは、2011年に完全復活し、今年で結成30周年を迎えた “ジュンスカ” の活動の傍ら、ソロで「味わいある温かい音の呼吸を身近に感じられる場所」を選んで、アコースティックギターによる弾き語り「SLOW CAMP」プロジェクトを全国で展開しています。この日、ツアーのちょうど中間地点にあたった岡崎に駆けつけてくれました。

ライブに先立ち、音楽ライター/ラジオパーソナリティーのジョー横溝さんと「仕事」や「地方」をテーマにしたトークセッションを開催。ワークショップ参加者にとって先輩世代の宮田さん。山や谷のある長い人生の中、どのようなマインドを持って仕事を長く続けるか。人から見たらうまくいっていないように見えるときも、自分自身はどう思うのか。そして、新しい一歩を踏み出す勇気をどう得るのか――ストレートに語られる言葉は、まるで楽曲の歌詞のように飾りなく純粋で、ぶっきらぼうに聞こえても優しさがありました。

「若い時は『あいつらに勝つんだ』とか。いったん派手な格好したら、それを続けなきゃいけない、と勝手に思ってた。今は『自分の身の丈で、音楽を長く続けたい』と考えるようになって。夢がないように聞こえちゃうかも知れないけど、自分がやっている仕事でまぁまぁ食えればいいんじゃないかな。大事なのは『どれだけ自分が満足しているか』に尽きると思うんだ」

「もちろん、音楽の世界でも違う仕事で成功している人もいる。でも、僕らは音楽が好きだから、ずっと続けたい。そうやって残っている人というのは、僕が見ていると、思いやり…まぁ思いやりもそれぞれだと思うんだけど、人としてハートがある人。綺麗ごとかもしれないけど、最終的には人とのつながりを大事にしている人だよね。生き生きしている人は行動しているし、やっぱり人との縁やつながりを大切にしている」

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宮田和弥さん(JUN SKY WALKER(S))。番組の収録さながらの軽快なトーク

東京で暮らし続ける宮田さんですが、最近では地方都市やそこにある自然に目を向ける機会が多くなったそうです。あくまで「楽曲全部の歌詞とメロディがあって成立する言葉なんだけどね」と前置きしながら、「東京は全てがあるけど『何もない所』だと感じる」と、往年のナンバー「すべて」の歌詞を引きながら語りました。「地方はゆるさがいい。何よりも人がいい」と東京生まれ、東京育ちのアーティストが語る言葉、参加者にどう響いたのでしょうか。

会場からのリクエスト(「スタート」「歩いていこう」)に加え、宮田さんからワークショップの参加者たちに贈られたナンバーは「さらば愛しき危険たちよ」でした。


次回、後編へ続きます。

 
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神吉 弘邦

フリーランス編集者、ライター

コンピュータ誌、書評文芸誌の立ち上げ、日英併記のデザイン誌『AXIS』編集部を経て、2010年より独立。カルチャー誌、デザイン誌、建築誌、料理誌、テクノロジー誌などオンラインと紙の両媒体で編集・執筆を行う。一方で「離島経済新聞(リトケイ)」デスク、「日本仕事百貨」エディターなどを歴任。現在は「これからの働きかた・生きかた」を探るため、さまざまな仕事や暮らしの主人公へのインタビューをライフワークにしている。

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