ベーシックインカム導入で私たちのキャリア設計はどう変わる?
加藤 晶子
2017/11/23 (木) - 08:00

希望の党の公約で注目を集めることとなったベーシックインカム。そもそもベーシックインカムとは何か? 他国での導入事例、導入されると私たちのキャリア設計はどう変わるのか? について、みていきます。

ベーシックインカムとは?

最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされる額の現金を定期的に支給するという政策です。 基礎所得保障、最低生活保障、国民配当とも、また頭文字をとってBIともいいます。

一定額の支給をする点において貧困対策の政策としてあげられることが多いのですが、その波及効果は大きいと考えられています。たとえば、生活保障による少子化対策や一定の安定の元の起業促進、生活保護と違い国民一律に支給することによる不公平感の軽減、犯罪の減少など、さまざまな効果が期待されています。

一方で、財源については疑問の声が上がるのがベーシックインカムです。スイスや海外のいくつかの国では、国民投票による検討が行われましたが、否決されています。反対派の主張は財源の確保。スイスでは、導入に際し2080億スイスフラン(24兆円)もの財源が必要となり、他の社会保障が停止ないしは減額されることが決まっていました。また、ベーシックインカム支給により労働意欲の低下があげられており、税収が減ることで、そもそもの財源確保が困難になることも予想され、反対派も多かったのです。

仮に日本で導入することを考えると、月15万円の支給で毎月18兆円、年間で216兆円と莫大な予算確保が必要となります。年金や生活保護をなくし、財源を捻出することになりますので、現実的ではないという見方もできます。また、一般的に他国で検討されている段階では、用途についての制限がないのがベーシックインカムの特徴です。働かずに賭け事に使ってしまっても本人の自由という点で、税金の使途として不適切という意見もあります。

賛否両論のベーシックインカムですが、実際に導入している国や都市もあります。今回はフィンランドの事例を見てみます。

ベーシックインカムを試験導入したフィンランド

2017年1月、国家レベルで初の試験導入を開始したのがフィンランドです。失業者のなかから抽選で選ばれた2000人が、毎月560ユーロ(2017年10月25日時点で約74000円)を受け取っています。ベーシックインカムの利点は、失業保険と違い、働いても減額されないというところです。フィンランドでも、失業保険と同程度の金額を支給されることにより、働く意欲の向上につながり、労働力の確保にもつながります。

私のフィンランド人の友人に聞いてみたところ(彼女は支給されていません)、失業していた時期があった彼女は、失業保険はありがたかったけど、少しでも働いて給与を得ると減額されるため、アルバイト程度の仕事では生活できず、実家に戻っていたといいます。現状のベーシックインカムの金額では、それだけで生活できるほどではないので、導入されたとしても仕事を辞めることはなく、若いうちに貯金もでき、生活の質が向上するのでうれしいと語ってくれました。

日本に導入されたらキャリア設計はどう変わる?

ベーシックインカム導入により、最低限度の生活が担保されていますので、起業や自己実現のための職業選択はしやすくなることが考えられます。毎日の生活の心配がないため、好きなことを仕事にでき、選択の自由も増えるでしょう。仕事をしたい人は複業しても良いですし、のんびり働きたい人は、最低限の仕事をすればあとは好きに生活できるという点で、メリットは大きいといえます。

また、一定の安定が得られることで、地方への移住が進むことも予想されます。雇用の確保が困難だった地方でも、ベーシックインカムだけで生活可能となり、家賃が低い分都会よりも生活水準が上がることで、移住する人が増え、雇用促進にもつながることが期待できます。

しかし、選択肢が増えるということは、それだけ個人の自己責任が問われるようになるということでもあります。働くかどうか、どういう雇用形態で働くのか、何をして働くか、ということを個人が選べるということは、早期に自分の職業について深く考える機会があるということでもあります。また、安定を理由にいままで1社にとどまっていた人材が、転職を検討することにより、優秀な人がより転職市場に現れ、より魅力的な仕事の競争は激しくなる可能性もあります。

自分のやりたいことに向けてスキルを高めたり、好きなことを深めたりしながら、主体的なキャリア設計が必要となるでしょう。

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