北米の取り組みに学ぶダイバーシティ&イクオリティ

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北米の取り組みに学ぶダイバーシティ&イクオリティ
2018/01/10 (水) - 07:00
浅賀 桃子
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関西大学東京経済人倶楽部主催で2017年11月29日に開催された「ダイバーシティ&イクオリティセミナー」。今後企業経営において求められることとして、人材の多様性(=ダイバーシティ)と平等性(=イクオリティ)の確保があります。日本ではまだ着手したばかりという企業が多いなか、先進的に取り組んでいるところの例をみていきましょう。

セミナー構成

本セミナーはアメリカ・オハイオ州立大学修士課程およびカナダ・トロント大学博士課程を経て帰国、現在は関西大学文学部助教の井谷聡子氏による基調講演、およびダイバーシティ&イクオリティへの取組を始めている企業4社からのパネリストから各社の取組紹介およびディスカッションの大きく2本立てで行われました。本稿では主に基調講演の内容に焦点を当てご紹介いたします。

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ジェンダーとセクシュアリティの多様性とは

2015年、東京都渋谷区の同性パートナーシップ制度開始を機にニュース等でも話題になることが増えたLGBT。本セミナーのトピックであるダイバーシティを考えるうえで「LGBT =ダイバーシティであるかのごとく捉えられていることがあるが、決してそうではないことを知ってほしい」と井谷氏。

ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、LGBTはレズビアン(Lesbian:女性に対して魅力を感じる女性)、ゲイ(Gay:男性に対して魅力を感じる男性)、バイセクシュアル(Bisexual:男女両方に魅力を感じる人)、トランスジェンダー(Transgender:出生時に与えられた性別に違和を感じる人)の4つの性的指向の頭文字をとって名付けられた、性的マイノリティの総称です。ただし、性的マイノリティにはこの4つのどれにも当てはまらない方々がいることについては、日本ではさほど知られていないのではないでしょうか。

今では性的マイノリティ・ジェンダーマイノリティの枠組みとして、「LGBTQQIP」や「LGBTQQIP2SAA」くらいまで細分化して呼ばれることもあるそうです。ちなみに「QQIP」とは以下の通りです。

Q:クイア(Queer:性的マイノリティ、ジェンダー・マイノリティの総称)
Q:クエッショニング(Questioning:自身が性的マイノリティ、ジェンダー・マイノリティかもしれないと感じている人)
I:インターセックス(Intersex:身体的特徴あるいは染色体の特徴が典型的な男女の枠組みに収まらない、あるいは両方の特徴を持っている人)
P:パンセクシュアル(Pansexual:男女のカテゴリーだけでなく、すべての性別の方に対して魅力を感じる人)

また、先述の「トランスジェンダーにも多様性がある」といいます。たとえば、異性装をすれば満足な人もいれば戸籍上の姓を変えたい人、名前自体を変えたい人、ホルモン療法を望む人もいるといった具合です。トランスジェンダーというと「性同一性障害」と同一だと混同されるケースも少なくありませんが、性同一性障害と呼ばれる人はトランスジェンダーの中でも、特に自分の身体の性を心の性に合わせるべく、治療を望む人のことを指します。つまり、トランスジェンダー=性同一性障害とは言えないわけです。

ジェンダーとセクシュアリティに基づいた「異性愛主義」や「同性愛嫌悪」などの社会差別構造が生まれていると井谷氏は指摘しました。具体例をいくつかご紹介します。

異性愛主義による身近な差別

就職活動においては、履歴書の性別欄や服装(スカートかパンツスーツかなど)、住居においては賃貸借や住宅購入時に同性カップルでの契約が認められない、冠婚葬祭時の服装や役割、中にはお墓に入れてもらえないなどの差別が身近に行われている現状があります。

2015年の電通ダイバーシティ・ラボによる調査によると、日本のLGBTの割合は7.6%と発表されましたが、この割合(約13人に1人)は左利きとほぼ同じです。しかし、Students labが学生約300人に「周囲にLGBTの人がいるか」調査したところ、わからない(62.2%)といない(18.9%)を合わせると約8割に達しているのもまた現状です。

多様なジェンダー、セクシュアリティと法整備

続いて、井谷氏のカナダにおける経験より、多様なジェンダー、セクシュアリティを認めるべく、どのような法整備などがなされているかについて紹介がありました。

カナダ最大の人口を抱えるオンタリオ州では、セクシュアリティなど生徒の属性に基づいた差別を認めず、多様性を持った生徒を受け入れられる環境を整えることが教師の責務として明記され、それぞれが個性に応じた教育を受ける権利が保障されています。また、先述の「多様性」という言葉について、性的指向やジェンダー・アイデンティティなど中身が具体的に書き出されている点も特徴的だとしています。さらに、性的指向やジェンダーに対するハラスメント(同性愛を嫌悪した悪口や中傷、身体的暴行、暴力、脅迫などが例示)の防止についても記述がなされているといいます。

カナダの事例を踏まえ今後日本ではどのように取り組んでいくべきなのでしょうか。井谷氏が大切だとまとめた点は、以下の4項目です。

・聴く(当事者への聞き取りを進め、会社のポリシーへと反映していく)
・教育(多様性、差別構造、行動に関する教育をしていく)
・内省(自身のステレオタイプが前提になっていないかどうかを振り返る機会を持つ)
・挑戦(性差別等の解体へ向け、組織体制の見直しや文化改革を行う)

先述のカナダは多民族国家と呼ばれていることからも、風土として受け入れやすかったのではないかと思われがちですが、それでも教育の場での明示に関しては保守団体等からの反対にあい、当初の予定よりも数年遅れで実現した経緯があるといいます。
日本においてもカナダほどではないにせよ、さまざまな国からの人々がともに住み、ともに働く時代になってきています。まずは上記4項目を一歩一歩進めていくことがダイバーシティの、そして人間として等しく認め合える関係=イクオリティへの実現に求められることなのではないでしょうか。

最後に行われたパネルディスカッションを締めくくる井谷氏の言葉をご紹介し、本イベントレポートの締めとしたいと思います。
「人数が多いから力が強いのか。たまたま自分がマジョリティだったと思うことです」
「すべての人が、多様性の一部だと思うことが大切です」

浅賀桃子氏プロフィール写真

浅賀 桃子

ベリテワークス株式会社 代表取締役・代表カウンセラー

ITコンサルティング会社人事などを経てカウンセラーとして独立。2014年ベリテワークス株式会社として法人化。ビジネスパーソンのメンタル不調者やキャリアチェンジに悩む方のケアを中心に、カウンセリング実績5,000名超。予防カウンセリングに強みを持ち、ストレス・メンタルヘルス・キャリアデザインなどのセミナー多数開催。キャリアコンサルタント、メンタル法務主任者、メンタルヘルス・マネジメント検定I種、ストレスマネジメントファシリテーターなどの資格を持つ。スヌーピー研究をライフワークとし、2015年NHKおはよう日本で紹介される。

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