「地域活性化雇用創造プロジェクト」で注目の産業とは
寺本 亜紀
2017/03/22 (水) - 07:00

正社員雇用の創出を目的とした「地域活性化雇用創造プロジェクト」。厚生労働省は2017年2月、2016年度の採択地域を石川県、愛知県、三重県、京都府、佐賀県、宮崎県に決定したと公表しました。地方へ転職する際はどのようなキャリアビジョンを描けるかが重要です。注目される産業をキャリアコンサルタントの視点で紹介します。

地方移住を決める前に、キャリアビジョンを描いてみる

地方移住をする際、その地域に仕事があるのかどうかが気になるところです。今回は、自身の興味のある分野から移住先を選ぶ、その観点で考えていきます。
まずは、キャリアの転機を迎えるタイミングで一度、自身のキャリアビジョンを描いてみてはいかがでしょうか。
キャリアビジョンとは、人生や仕事において自身がなりたい姿を具体的にイメージすることをいいます。自身の適性や能力、これまでの経験などキャリアの棚卸しをしたうえで、「自身の強み」や「興味があること」、「譲れない価値観」などを自身で把握し、「3年後や10年後の自身のありたい姿」を明確にしていきます。
これが、今後の生き方、働き方など深く考えるきっかけになるのです。
次に、自身が興味のある産業はどこの地域にあるのか、その産業で地域活性化や雇用創造されているのかを確認します。

例えば、厚生労働省で採択された6地域の「地域活性化雇用創造プロジェクト」などから地域を絞る方法もあります。
このプロジェクトは、地域の雇用の安定、能力開発を推進し、地域における生産性の向上や経済的基盤の強化を図るのを目的としています。
採択された6つの地域には、採択地域には年間10億円を上限に最大3年度の間、実施費用の8割(2016年度のみ10割)が補助されます。
つまり、国が後押しをして、今後各地域がそれらの産業に力を入れるということです。

地方移住の3つのパターン Iターン、Jターン、Uターン

地方移住には、Iターン、Jターン、Uターンの3つのパターンがあります。
Iターンとは、生まれ育った故郷以外の地域に就職・移住することをいいます。
Jターンとは、地方で生まれ育った人が一度都心で働き、その後また故郷とは違う別の地方に移住して働くことをいいます。
Uターンとは、地方で生まれ育った人が都心で一度勤務した後に、再び自分の生まれ育った故郷に戻って働くことをいいます。

Uターンは地元に戻る形ですが、IターンやJターンは故郷以外の土地に移住することを意味します。住んだこともない土地に暮らして仕事をするのですから、これは大きな決断がいることです。
そのためにも、事前に移住先の仕事面や生活面での支援体制などを確認したり、どのような生き方、働き方をしていくのか、事前にキャリアビジョンを描いたりすることが重要になるのです。
こうしたことを事前にしておかないと、もしかしたら、田舎暮らしの刺激のなさや仕事内容に嫌気がさして、再び大都市に戻りたくなる「Oターン(Uターンした人がその後、都会に戻ること)」になるかもしれません。

地域活性化と雇用創造が期待できる6つの地域の産業とは?

まず今回採択された6つの地域では、どのような産業で地域活性化し、雇用を創出しようとしているのかをみていきます。

1.石川県 ものづくり産業と観光関連産業の振興を通じた雇用創出
対象となる主な分野:ものづくり産業分野、観光関連産業分野

2.愛知県 「産業首都あいち」実現に向けた中堅・中小企業の競争力強化による雇用創造プロジェクト
対象となる主な分野:自動車産業、地域創生産業、観光集客産業

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3.三重県 サービス産業等の生産性向上と高付加価値化を通じた観光、「食」関連産業の振興による雇用創造プロジェクト
対象となる主な分野:観光、食、情報関連産業

4.京都府 京都観光関連産業正規雇用化促進事業
対象となる主な分野:観光関連産業

5.佐賀県 佐賀さいこう!ものづくり産業振興・雇用創造プロジェクト
対象となる主な分野:自動車関連産業、食品関連産業、陶磁器関連産業、コスメティック関連産業

6.宮崎県 みやざき地域資源活用型産業雇用創造プロジェクト
対象となる主な分野:情報通信・学術研究関連分野、観光分野

佐賀県 日本版「コスメティック・バレー」をめざす取り組み

6つの採択地域にはそれぞれの県の主要な産業が指定されていますが、今回はそのなかから佐賀県の取り組みを取り上げます。
佐賀県は、伊万里焼、有田焼、唐津焼など古くから陶磁器の産地として有名で、今回の「地域活性化雇用創造プロジェクト」の対象分野としても当然、陶磁器関連分野ははいっています。
今回はここ数年、佐賀県が新たな産業と位置づけるプロジェクトの一つ、コスメティック関連の産業に注目してみます。

ところで、フランスの化粧品産業クラスター「コスメティック・バレー」をご存知でしょうか?
世界最大の産業クラスターで、研究から最終生産まで、関連産業全体をカバーする企業600社近くが集積し、7大学、主要な国立研究機関、200の公立・民間研究所とも連携、雇用者7万人で形成されています。
フランスの香水・化粧品産業は、世界市場シェア25%に達し、約160億ユーロの売上高を達成しています。フランス経済の輸出部門の貿易黒字では、航空機製造に次いで2位を占める巨大産業です。

日本は、スキンケア市場では世界1位、メイクアップ市場では世界2位と言われています。
こうしたことから、フランスの「コスメティック・バレー協会」の名誉会長アルバン・ミュラー氏は佐賀県唐津市に注目。日本におけるコスメティック分野のビジネス環境を整備するために、フランスの「コスメティック・バレー」に倣って2013年11月、関連企業、生産者、大学等の研究機関、行政及び経済団体等の支援機関で構成される「ジャパン・コスメティックセンター」が佐賀県唐津市に設立されました。会長はミュラー氏が務めています。

佐賀県は、コスメ関連に興味がある女性にとっては、今後注目のエリアとなりそうです。
コスメ産業での創業を行うためのセミナーや個別相談の実施、雇用後の技術的なOJT実施など、さまざまな支援も行っていくようです。

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「地域活性化雇用創造プロジェクト」の採択地域には、それぞれ注目すべき分野があります。
例えば、観光業に興味がある人は京都府や三重県の取り組みをチェック、輸送機械に関する知識や技術を得たい人は愛知県の取り組みをチェックというように、自身の興味ある分野を把握し、その地域での具体的な取り組みを確認することから始めてみてはいかがでしょうか。それが今後のキャリアにつながる一歩となるかもしれません。

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