仕事の効率アップ、新しい発想を支援する「キャンピングワーク」のスタイル

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仕事の効率アップ、新しい発想を支援する「キャンピングワーク」のスタイル
2018/02/27 (火) - 07:00
神吉 弘邦

株式会社岡村製作所、株式会社ロフトワーク、株式会社スノーピークビジネスソリューションズの3社が共催して、アウトドアの発想を取り入れた新しいワークスタイルが体験できる試みが渋谷で行われました。1月30日に催された「OFFICE CAMPERS」の模様をトークイベントの内容を中心にお伝えします。

都心のオフィスビルの光景を変える

仕事のしやすさを優先に発達してきたのが現代のオフィス。IT化に応じて変化したデスク周り、人間工学に基づいたチェアの開発、フリーアドレスに対応させた空間設計など、働く空間の利便性は以前にも増しています。

でも「気分転換に屋外の公園で仕事してみたら、意外に捗ってしまった」といった経験はないでしょうか。人間が効率良く作業を進めたり、創造性を発揮したりする条件には、さまざまな要素が影響している証拠でしょう。

ある人にとっては多忙さを一時忘れるリラックスできる視覚情報かもしれないし、もしかしたら「足をポンと投げ出したような姿勢が一番アイデアが湧く」という人だっているかもしれません。

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実際にキャンプギアがあるワークスペースを体験する機会を、関心のある人たちにまずは体験してもらう趣旨(写真左:office campers提供)

参加者は13時から18時までの第1部の「オフィスキャンパーズ体験会」でWi-Fiや電源を活用して仕事をしたり、主催メンバーと意見交換や商談を交わしていました。

おりしも働き方改革が推進され、ワークスタイルが多様化していく現代。続く第2部では「キャンピングワークがもたらすクリエイティブな働き方とは?」をタイトルにしたトークイベントが催されました。

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写真:office campers提供
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岡村製作所、ロフトワーク、スノーピークビジネスソリューションズから、ワークスタイル研究や空間設計などを手がける4人が登壇。焚き火テーブルを囲むアットホームな雰囲気で進んだ

 

モチベーションや自発性のアップに寄与

まずは「創造性を高める環境づくり」をテーマに、それぞれが実践する事例が紹介されました。岡村製作所が取り組んでいるのが「WORK MILL(ワークミル)」プロジェクト。メンバーの山本大介さんによれば、岡村製作所の社内では30人ほどが職種を問わず、部署横断で活動しているそうです。

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写真左:株式会社岡村製作所 WORK MILLプロジェクトメンバー山本大介氏。OFFICE CAMPERS、コラボレーション・クリエイター、ワークショップ・デザイナー。共創プロジェクトの企画・推進や講演活動、システム開発、コピーライティングまで多岐に渡る

働く環境や働き方を変え、ひいては生き方を変えるために、ワークスタイルの専門家集団として他の企業と共同研究。それらの知見を、ウェブマガジンと紙のマガジンで伝えています。ワークプレイスのデザインも行い、東京、名古屋、大阪の3都市に共創空間の拠点をもつのが特徴です。

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WORK MILLプロジェクトが発行しているマガジン

山本さんはオフィス設計に「ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」という指標が重要になってきているトレンドを挙げました。これは、自分の作業内容に合わせてオフィスをつくろうとする考えで、「時間」と「場所」を自由に選択できる働き方を目指すもの。そのための手段として、アウトドアのワークスタイルを選択肢に提案します。

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まずは「楽しむ(have fun)」のがキャンピングオフィスと山本さん。グリルテーブルの周りにソファやローチェアを置いたり、ラウンジシェルの中にラウンドテーブルを置いてちゃぶ台のように使ったりと自由な発想で

アウトドア用品は通常のオフィス家具よりも安価なため、多様なワークスペースを用意する場合にも経営コストを圧迫しないのがメリット。加えてキャンプのようなアクティビティは「自発的に動ける人材の育成につながる」と山本さんはいいます。

「キャンピングオフィスはあくまで手段であって、場をつくる方のマインドに働きかけるものです。今後は個人が組織の中で自立して能力を発揮する時代。組織のいう通りではなく、自発的に価値を高めていき、他者とシナジーを生んでいくワーカーが増えるのは、経営者にとっても利益があると考えています」(山本さん)

企業が新しい価値観を生み出すための空間づくりとは

同じくWORK MILLプロジェクトメンバーの庵原(いはら)悠さんは、慶應義塾大学と共創(きょうそう)空間についての研究や設計をしています。

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株式会社岡村製作所 WORK MILLプロジェクトメンバー デザインストラテジスト 庵原 悠氏。既存のデザイン領域を越えて、デジタルメディアや先端技術がもたらす新しい協働のスタイルとその場づくりに従事

今までのオフィス環境は、どうしても個人作業の効率性を高めるための設計だったと庵原さん。しかし、デジタルファブリケーションなどの新しいものづくりが立ち上がってきているいま、与えられたオフィス環境では不十分で、自分たちで環境をしつらえるのが当たり前になってくるといいます。

「企業がどうやったら今までと違う価値を生み出せるのか。社員のクリエイティビティを後押ししようとするとき、これまでの社内のタスクを与えられるという強制的な方法よりも『誰かが、それは社内に限らず、社外の人がサポートしてくれるから一歩前に踏み出せる』という共創のほうがわかりやすいのでは。コラボレーションを促すクリエイティブな空間が求められています」(庵原さん)

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トークセッションの合間には、参加者同士がテーマに沿って短い時間で話し合うパートを設けた

ビジョンシェアリングに最適

複数の名刺を持つパラレルワーカーとして活動する岡部祥司さんは、かねてから自然とともに遊び、働くスタイルを提唱してきました。愛知県岡崎市のITコンサルタント会社HARTISとスノーピークの共同出資で設立されたスノーピークソリューションズでは「自然と、仕事が、うまくいく。」をテーマに、働く人々の自然志向を軸にした活動を展開しています。

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株式会社スノーピークビジネスソリューションズ OSO/TOエバンジェリスト 岡部祥司氏。竹中工務店を経て独立、ウェブ制作会社社長を勤め、横浜青年会議所理事長を経験。地域を照らす“トウダイ”を目指しているNPO法人ハマのトウダイ共同代表など活動は多岐にわたる

コーポレートメッセージに「人生に野遊びを。」を掲げて、キャンプサイトに向けたビジネスを展開しているスノーピーク。ただし、キャンプを楽しむ人口は全体の6%にすぎず、この考え方をいろんな業種と掛け算しようと複数の子会社が生まれています。

「オフィスのなかでこうした空間をつくる、あるいは都市のなかで、外で働く。それにはいろんな効能があるので、その効果を体験してもらう機会を設けています。働く人たちを、少しでも自然に近づけることを私たちはやっていきたいんですね」(岡部さん)

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スノーピークビジネスソリューションズは製作している冊子には、新潟・三条のSnow Peak Headquartersのほか、名古屋と横浜のショールームでもキャンピングオフィスは体験可能

「研修でキャンプサイトを使っていただき、チームビルディングに活用する例も多いです。また、オフサイトミーティングにも効果が見られます。経営者を集めたビジョンシェアリングを、実際にキャンプフィールドでやっている企業もあります」と岡部さん。

キャンプから得られるものや、キャンプで目指す姿勢はビジネスに共通しているという指摘も印象的でした。

仕事に取り入れたいキャンプの知恵

林業と地域の再生を目的に、岐阜県飛騨市と株式会社トビムシ、株式会社ロフトワークが共同設立した「株式会社飛騨の森でクマは踊る(通称ヒダクマ)」の一員として活躍する岩岡孝太郎さんは、実体験からこんなエピソードを披露します。

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株式会社ロフトワーク FabCafe LLP Fab Director 岩岡孝太郎氏。建築設計事務所に入社し個人住宅や集合住宅の設計を担当。FabCafeではディレクターとしてクリエイティブなアイデアを形にするサービスや企画を担当している

「キャンプが初めての人に聞くと、キャンプサイトに着いてテント設営をしてから、夕飯の支度をするまでの間のポッカリと空いた『何をやったらいいかわからない時間』が苦手だという声があるんですね。でも、キャンプに行く目的というのは普段しないことを野外ですることだけではなく、自分自身や一緒にキャンプに行った仲間の内面を掘り下げていくような趣旨もあると思います」(岩岡さん)

焚き火を囲んだトークはビジョンシェアリングの機会として最適な場だという意見は、4人の登壇者で一致していたようです。

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古民家を改装したデジタルものづくりカフェ「FabCafe Hida」。広葉樹の森と伝統の組木、テクノロジーを活用して飛騨の森に新しい価値を生み出そうとしているヒダクマの拠点になっている

岩岡さんがキャンプで一番好きなのは、何にもない場所に営みが立ち上がってくる「設営」と、最後の「撤収」の時間だといいます。

「別のNPOでやっているワークショップの例ですが、最初に何をするかの目的を話す『チェックイン』をして、終わるときには振り返って何を思ったのか、最初と何が変わったのか共有する『チェックアウト』をして閉じるというステップを設けています。オフィスワーカーにも、こうした設営と撤収という概念を入れたらどうでしょう?」とアイデアを披露した岩岡さん。

濃密なアイデアが短時間で交換されたイベント「オフィスキャンパーズ」。働き方の選択肢として、アウトドアを取り入れたオフィス空間を目にする機会は次第に増えていくかもしれません。

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撮影:神吉 弘邦


【OFFICE CAMPERSに関するお問い合わせ】
オフィス家具とアウトドアを融合させた”働き方改革”の新提案 「OFFICE CAMPERS(オフィスキャンパーズ)」始動

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神吉 弘邦

フリーランス編集者、ライター

コンピュータ誌、書評文芸誌の立ち上げ、日英併記のデザイン誌『AXIS』編集部を経て、2010年より独立。カルチャー誌、デザイン誌、建築誌、料理誌、テクノロジー誌などオンラインと紙の両媒体で編集・執筆を行う。一方で「離島経済新聞(リトケイ)」デスク、「日本仕事百貨」エディターなどを歴任。現在は「これからの働きかた・生きかた」を探るため、さまざまな仕事や暮らしの主人公へのインタビューをライフワークにしている。

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