ライフスタイルとリンクしている音楽活動をしたい ーCaravan
SELFTURN ONLINE編集部
2018/03/16 (金) - 07:00

自分自身の可能性を信じ逆境を乗り越え、 成功を掴んだアーティスト、俳優、クリエイター達。 時代の表現者達が語るSELF TURNとは? 彼らのストーリーを通じて、「自分らしい生き方、働き方」を考える。
3回目となる今回は、メジャーレーベルを離れ、小さな茅ヶ崎のプライベートスタジオで自分流の活動を続けるシンガーソングライターCaravanに話を聴いた。
Caravan流の「生きがい」「仕事論」とは?

ベネズエラと日本のギャップに悩んだ少年時代

――Caravanさんは海外育ちなんですよね?

「はい。ベネズエラです。父親の転勤で家族でベネズエラに行く直前に生まれて、小学校2年生ぐらいまで居ました」

――どんな少年時代だったんですか?

「ベネズエラってみんながマイペースでスローな人たちだったんです。なので、日本に帰ってきたときはかなり戸惑いました。それとベネズエラは自分の思っていることをちゃんと主張するのが当たり前で、いいたいことを遠慮してると怒られるんです。そこも日本は逆で、日本は、目立つな!とかいいたいこというな!みたいな感じじゃないですか? それでパニックになって、学校に行くのが苦痛で、幼少期はその違いに適合するのに精一杯だった感じですね」

――どうやって適合したんですか?

「子どもながらにどっちでもいいやって思ったんです。どっちも正解だよなって。そう思うようになって気が楽になりましたね」

――音楽を始めたきっかけは?

「中学校のときにイカ天やホコ天でバンドブームが来て、みんなバンドをやりはじめて、自分もバンドをやるようになって楽器を弾くようになったんです。そうしたら、まわりとすごくコミュニケーションが取れたんです。それまでは、モジモジとまわりから眺めているタイプだったんですけど、ギターを持っていると誰とでも遊べたり、『今度スタジオに入って練習してみようよ』なんて話になったりして、人生が楽しくなったんです。それもあって音楽とバンドに完全にハマっちゃいました」

自分を必要としてくれる人が必ずいる

――Caravanさんも最初はバンドだったんですね

「はい。しかも高校の同級生と組んだバンドはかなりいい感じで、メンバーが20代後半になるくらいまで続けていたんですけど、そのぐらいの歳になるとバンドを続けるのって難しくなるんです。結婚したり、子どもが出来たり、仕事が忙しくなったりで…1人辞め2人辞め、自然消滅しちゃったんです。でも僕はまだバンドを辞めたくなかったのでメンバーを探すために、宅録で曲をつくり自分で歌ったデモテープを友達に配っていたら、聴いた人から『これ悪くないから、自分で歌ってみたら?』といわれたんです。最初は自分で歌う気はなかったんですけど、たまたま知り合いのお店でソロでライブをしたら、それも好評で『次いつにする?』って話になって。それでだんだん自分で歌うようになっていきました」

――なるほど

「で、ソロミュージシャンとして食っていくのにデモテープをいろんな音楽事務所に送ったんです。そのなかの1つで、いいミュージシャンたちを抱えている某事務所の社長から『うちで面倒みてあげるよ』っていわれて。その事務所に所属したんですけど、大人な嫌なコトがいっぱいあって…。1年半ぐらいは所属したんですが、逃げるようにして辞めましたね(笑)」

――その“大人な嫌なコト”、詳しく聞きたいなぁ(笑)

「そこは話せないです(笑)。でも音楽をやるうえでも辛いことも多くて。たとえば、デモテープをつくると、会社の会議室で20人くらいのスタッフに聴かせるんです。で、イントロが始まって直ぐにテープを止められて、『イントロから盛り上げないとダメでしょ』とかいわれて、なんだかわけが分かんなくなっちゃったんです。『そういう曲を書かないと音楽ができないんだったら俺はもう無理かな』ってそのときは本当に思って、結構病んじゃって、どんどん音楽をやる気がなくなっていっちゃいました。とはいえ、いまさら就職できる歳でもないし、バンドや音楽活動を辞めて堅実にやってる連中に対して“俺は音楽を続けるぞ”みたいな変な根性もあったんで、辞めた事務所で散々文句をつけられてた曲を5曲ほどCD-Rに焼いて、それを手売りしながら全国を転々とライブをしながら周ったんです。それこそ何百軒ものお店でライブをしました。ライブしたお店に泊めてもらったり、『この辺で次歌えるお店ないですかね?』って聞いたら『隣のバーが歌えるよ』って連れていってもらったり。そんなことをしていたら気が付けば全国に僕の音楽を好きだっていってくれる人たちが増えていったんです。しかも、その頃やっていた曲を未だに演奏していますからね」

――どの曲ですか?

「『camp』と『Feed back』はその当時からの曲ですね。だから、適材適所なんですよ。曲って1カ所でダメだからって全部でダメではないんです。それこそ子どものときに学んだことと同じで、ここでの正解が世界で通用するわけじゃないし、裏を返せば、その価値観はどこかでは通用するんです。だから、自分のあるべき場所に自分がいれば何かしらの役に立つし、必要としてくれる人が必ず出てくるんだけど、見当違いの水槽でいくら泳いでてもずっとただ独り浮いたままで報われないんです。あのとき、自分で足を使っていろんなところに動いて行ったことは、自分の肥やしになったし、自分が居るべき場所を見つけられたんで。結局いま居る場所はそのときに辿り着いた居場所と同じなわけですからね」

――ちなみにそれは何歳くらいのときですか?

「30歳手前ですね。27歳ぐらいだと思います。そのときにCaravanという名前にして、全国を旅しながらいろんなところで演奏したし、その土地の面白いミュージシャンとセッションをしまくりました。で、静岡で会ったパーカッションの人と九州まで一緒に旅しちゃったこともあったし。お金はなかったけど、面白いことやろうっていうパッションだけはありましたね」

人間関係で変なストレスがないんです、いまは

――そして2004年にインディーズデビュー。さらに2006年にはavexからメジャーデビューを

「そうですね。メジャーって、スタッフも多くてシステムも整っていて合理的で良い点はたくさんあるんですけど、その一方でトラウマともいえる最初の事務所と同じ感じがしたんです。たくさんスタッフがいるのに腹を割って話し合える人間が見つからなかったり、出来上がっているシステムに馴染めなくて違和感を感じてしまったり…。そんななかで年に一枚とかのペースでアルバムを出していたら、心が窮屈になってきてしまって。とにかくいろんなことが自然じゃないんですよ。曲も出来てないのに発売日が決まってたりとか、もちろん俺はサーフィン好きなんですけど、“サーフミュージック日本代表”みたいにプロフィールに書かれてたり、俺が出るべきじゃない番組に出演したり、要はむりくりでも俺を売り出そうっていう感じがすごい嫌で、どんどん萎縮していっちゃったんです。もう少しこのまま頑張ろうかなぁとは思いつつも、いつかは自分でレーベルをやりたいなって漠然と思っていました。そしたら震災が発生して、ポンと答えが出ちゃったんです。“俺は俺だ。俺らしく行こう”って。で、スタジオつくろう。レーベルつくろう。事務所も仲間とやろうって。でも、考えてみたら原点に戻ったんですよね。自分でライブして気に入った人がCD買ってくれて、それを元手にまた次のことを考えて動く。そういう等身大のスタンスのほうが、俺には合っているんだなと改めて思いました」

――しかもスタジオの場所は茅ヶ崎で、もともとスナックだったところを自分たちで改装したDIY精神の塊のようなスタジオです。音楽業界=六本木とか青山みたいなイメージですが、何故茅ケ崎に?

「自分のやっている音楽を考えたら、ライフスタイルとリンクしている活動にしたいなと思ったんです。ライフスタイルはサーフィンしたりのんびりやってるのにレコーディングだけ都内のガラス張りのスタジオっていうのはちょっとおかしいなと思って。リアルなほうが説得力があるし矛盾がないんですよ。矛盾があることにもう耐えられないなぁって思っていたので」

――そして、そのスタジオでレコーディングした4年ぶりのアルバム『The Harvest Time』が2017年11月にリリースされました。メジャーにいたときに比べたらスローなリリースですが、出てくる音楽もやはり違いますか?

「“やっている感”というか手ごたえみたいなものはいままで以上に感じます。特に“届いてる感”は昔よりも格段にありますね。それは売れた枚数という意味じゃなくて、たとえば、ライブに来てくれてる人の音楽を求めているパワーやエネルギーが凄く濃いんですよ。だからこのやり方にしてよかったと思っています」

――しかも、CDの流通は自身のHPとライブ会場と知っている人のお店限定の販売ですよね?

「そうですね。メジャーにいたときは、既存の流通システムで売ってたわけですが、既存の流通システムやJASRACって俺らにとって意味があるのか?とか、本当に必要なのか?と、今まであたりまえにやってたものに対してすごく疑問をもつようになったんです。それは震災の影響もあったと思いますね。で、意味なくただ習慣でやっていたことを一切排除して自分たちなりの流通で売るようにしたんです」

――音楽ビジネスにおけるメジャーとインディーズ、それは大きなプロジェクトの一部として働く大企業と、自分達の手でモノをつくる中小企業の関係に似ているかも知れませんね。実際にメジャーのときと比べていかがですか?

「金銭的には苦労しているけど、マインドはすごく豊かですよね。そもそも人間関係で変なストレスがないんです、いまは。でもメジャーのときは、たとえば昨日まで一緒に制作会議をしてた人が急に九州に飛ばされちゃったとかが普通にあって(笑)。僕はソロミュージシャンなので、スタッフに対してもバンドメンバーみたいな信頼感をもちたいんです。ディレクターさんもマネージャーさんもPA(音響)さんも楽器のローディーさんも、結局は僕のバンドメンバーなんです。その人が急に九州に飛ばされるとかっておかしいんですよ。僕は身近な人とはきちんとコミュニケーションを取りたいので、それが出来ないのはすごくストレスでしたよね」

自分も喜んで人も喜んでくれたら、それは最高の仕事

――わかります。Caravanさんが生き甲斐を感じるときってどんなときですか?

「人に必要とされたり人が喜んでくれたりすると単純に嬉しいです。俺みたいなフーテンな人生の人間でも喜んでもらえるんだなぁって。ライブで自分がつくった曲をお客さんが歌ってくれたり、気持ちよさそうに聴いてくれていると、音楽で繋がれている気がして、俺にとっては何にも変えられない喜びだったりします。大袈裟にいったら生きていてよかったって思うくらいの夜が今まで何回かあったし、その感じをまた味わいたいなぁって思ってます。結局、人と繋がれることが嬉しいんですよね。それが生きがいなのかもしれませんね。幼少期から“人との繋がり感”ですごく悩んでいて、音楽をやっているおかげで“人との繋がり感”を味わせてもらっているのでこの仕事でよかったなって思います」

――では最後に、仕事で悩んでいる人に何かメッセージを送るとしたら?

「俺からかけられる言葉なんかないんですけど(笑)。でも、自分も喜んで人も喜んでくれたら、それは最高の仕事ですよね。そのバランスは難しいけど、人が喜んでも自分が全然楽しくないことをやっているのは辛いと思います。だから、どんな仕事であれ自分が『よっしゃ!』っていう達成感を得られるかは大事だと思いますね。それと、自分がやっていることに誇りと自信をもって欲しいです。それがどんな仕事であれ社会に何かしらの貢献をしているはずです。一つの世界、価値観で判断しなくていいんですよ。世界にはいろんな価値観があるので」

インタビュアー:ジョー横溝
PHOTO:徳田 貴大

ハーベスト10周年記念アルバム
「The Harvest Time 」Now On Sale!!!
SFMC-005 3,000yen+tax

01.Astral Train (Instrumental)
02.Retro
03.Heiwa
04.Travelin’ Light
05.Rainbow Girl
06.モアイ
07.Chantin’ The Moon
08.Yardbirds Swingin’ (Instrumental)
09.Maybe I’m a Fool
10.Stay With Me
11.Future Boy
12.おやすみストレンジャー
13.夜明け前
14.In The Harvest Time

HARVEST ONLINE SHOP , ヴィレッジヴァンガード,
go slow caravanその他の店舗にて販売。

Caravan / Retro【MUSIC VIDEO】
https://youtu.be/WTAQ52cXqSU

Caravan "The Harvest Time" TOUR 2018
3/16(fri) 二子玉川SOUL TREE
3/18(sun) 三島 cafe&bar日家
3/21(祝) 新潟 りゅーとぴあ能楽堂
3/22(thu) 高崎SLOW TIME
3/24(sat) 喜多方 大和川酒造 昭和蔵
3/25(sun) 塩竃 杉村 惇美術館
4/6(fri) 大阪Banana Hall
4/8(sun) 名古屋BOTTOM LINE
4/14(sat) 福岡IMS HALL
4/15(sun) 岡山YEBISU YA PRO
4/21(sat) 札幌Con Carino
4/22(sun) 札幌Con Carino
Caravan “The Harvest Time” TOUR 2018 FINAL
5/20(sun) EX THEATER ROPPONGI
Open 17:00 / Start 18:00
Ticket Adv 全席指定 5.500yen ※来場者にCaravanオリジナルPINSプレゼント!
Ticket 3/4(sun) On Sale!!!(Pia/Lawson/e+)
Info. DISK GARAGE 050-5533-0888
Member : Caravan(vo>)
宮下広輔(ps.gt) , 高桑 圭/Curly Giraffe(ba) , 椎野恭一(dr) , 堀江博久(key)
TOUR INFO. www.harvest-music.com/theharvesttime.html

ハーベスト10周年記念アルバム
「The Harvest Time 」Now On Sale!!!
SFMC-005 3,000yen+tax

1974年10月9日 生まれ。 幼少時代を南米ベネズエラの首都カラカスで育ち、その後 転々と放浪生活。
高校時代にバンドを結成、ギタリストとして活動。
2001年よりソロに転身。
全国を旅しながらライブを重ね、活動の幅を広げてゆく。
2004年4月 インディーズデビュー。二枚のアルバムを発表。
2005年 メジャーへ移籍。 2011年までの間、年に一枚のペースでアルバムを発表してきた。
一台のバスで北海道から種子島までを回る全国ツアーや、数々の野外フェスに参加するなど、
独自のスタンスで場所や形態に囚われない自由でインディペンデントな活動が話題を呼ぶ。
2011年には自身のアトリエ "Studio Byrd"を完成させ、2012年 プライベートレーベル “ Slow Flow Music” を立ち上げた。

独自の目線で日常を描く、リアルな言葉。
聞く者を旅へと誘う、美しく切ないメロディー。
様々なボーダーを越え、一体感溢れるピースフルなLive。
世代や性別、ジャンルを越えて幅広い層からの支持を集めている。

これまでにDonavon Frankenreiter、Calexico、Tommy Guerrero、Ray Barbee、Beautiful Girls、SLIP、Sim Redmond Band等、多くの来日アーティストのサポートアクトや共演を果たし、YUKI「ハミングバード」「Wagon」、SMAP「モアイ」、渡辺美里「Glory」「Hello Again」を始め、楽曲提供も手掛けている。

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