どんなキャリアにも応用できる「基礎力」を磨け ─「人生100年時代の社会人基礎力」シンポジウム

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どんなキャリアにも応用できる「基礎力」を磨け ─「人生100年時代の社会人基礎力」シンポジウム
2018/04/17 (火) - 07:00
鳥羽山 康一郎

経済産業省では、「我が国産業における人材力強化に向けた研究会(人材力研究会)」を開催して、来たるべき時代に向けての学び方や働き方など、必要となる能力について検討を重ねてきた。その一環として開催されたのが「人生100年時代の社会人基礎力シンポジウム」だ。有識者によるパネルディスカッションや参加者によるワークショップを通じ、社会人として備えておくべきチカラとは何かを探った。社会人になる前の学生も多数参加し、満席となったこのイベントをレポートしてみる。

第一部:基調報告 基礎力とは、基盤となるOSに他ならない(法政大学名誉教授 諏訪康雄氏)

「人生100年時代の社会人基礎力シンポジウム」口開けの基調報告は、法政大学名誉教授の諏訪康雄氏。経済産業省人材力研究会の人材像ワークグループで座長を務めている。
「人生100年ということは、キャリア時間軸も当然長くなる。職業年齢が延び、寿命の概念も多様化する」とし、人生の第一期を20〜30代、第二期が40〜50代、第三期60〜70代、第四期を80代以上に分類。第三期以降も職業年齢とするならば、私たちはまったく未知の経験をすることになる。
また、「キャリアオーナーシップという概念を持ち、自分のキャリアは主体的に形成していくべき。自分ごととしてキャリアを捉えていかなければ」と、自分のキャリアを人に委ねない「キャリア権」の考え方についても語った。
起業する人の1/3は60代という数字を挙げ、何歳になっても社会人基礎力は大切であること、それは人生における基盤のOSであると結んだ。

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第一部:パネルディスカッション 共通項は、「ワクワクすること」

第一部は基調報告に続きパネルディスカッションが行われた。パネリストは経済産業省参事官、企業の人事担当者、起業家からYouTuberと幅広い。それぞれが考える社会人基礎力を語り、後半は活発なディスカッションが行われた。妄想力、自己肯定力、情熱と挑戦、そしてワクワクといった言葉が飛び交い、多方向から「社会人基礎力」を浮かび上がらせた。

学ぶことの大切さをもう一度考えたい
伊藤禎則氏(経済産業省 産業人材政策室 参事官)

働き方改革の第二章が始まっている。いかに生産性を上げ、モチベーションを保つかが問われる。多様化する社会の中で、自分のキャリアをどうつくっていけばいいのかが、重要。今まで、人生は3つのステージに分けて語ることができたが、それが渾然一体となっているからだ。大切な要素として「学び」「責任の共有」「実地体験」を挙げたい。なかでも学びについては、何をどう学ぶか、学んだことをどこで使うかを考えたい。そして、社会人基礎力は体験した総量によって生まれる。体験をリフレクション(振り返る)することにより、より深めていけるだろう。

思いをシェアして、一億総ワクワクを
島田由香氏(ユニリーバ・ジャパン 取締役人事総務本部長)

仕事は一人でするのではなく、連携したり関係性を築いたりすることによって育てていくもの。時に内省して、自分がどういう状態なのかを掴んでほしい。DoingだけではなくBeingも大事なキーワード。いま起こっている状態を第三者的に俯瞰すると、見えなかったものが見えてくる。このスキルで自分を見られる人がリーダーになれば、組織は変わる。社会人基礎力は、実感し体験すること以外では身に付かない。加えて、自己肯定感の強い人であってほしい。それぞれの思いをシェアすれば、一億総ワクワクできる社会をつくることができる。

思いはすべてのテクニックに勝る
嶋本達嗣氏(博報堂生活者アカデミー 主宰)

生活者を研究する機関で所長を務め、生活者の発想でライフスケープを見続けた結果、「思いがあるか」が社会人基礎力を築く上で重要とわかった。自分自身も教育に携わりたい思いを抱き続け、生活者アカデミーの開講によってその願いが叶った。根のないところに葉は茂らない。その根っここそ社会人基礎力で、持ち続ける思いが葉を茂らせる。いろいろなテクニックを使うよりも、こうやって思いを鍛え続けていくことが大切だ。また、若い人たちには勇気を育んでほしい。自分のことを人に語るのは恥ずかしいし痛いが、それをやっていくと勇気につながるからだ。

自分で自分をほめ続ければ、それが自信につながる
ヒカル氏(YouTuber)

自分には妄想癖があって、いつも都合のいい妄想を巡らせてイメージトレーニングし、勝ち癖を付けてきた。現実には評価されなかったから、せめて自分の中で自分をほめてあげたいと思った。人はほめて伸びるもの。それが自信にもつながる。まずは好きな仕事に夢中になってほしい、ゲームにはまるように。夢中になれば、時間も苦にならない。いま、きっかけがありさえすればうまくいくと思っている人たちのためのサービスを立ち上げている。難しいが、26歳のいましかできない熱量で進めている。角度を変えて物事を見たり心に響く言葉を届けたりしていきたい。

大切なのは情熱・好奇心・独自性
船橋力氏(トビタテ!留学JAPAN プロジェクトディレクター)

高校生や大学生の海外留学を応援しているが、海外に行ってショックなのは「Who are you?」と訊かれること。自分にしかできないことや、アイデンティティを問われている。その気づきは、まさに留学のように異なる環境で違う人と出逢うことで得られる。これが情熱・好奇心・独自性といった、社会人基礎力の中で最も重要な事柄につながる。さらに、内省も大事。何かに没頭して、それを振り返ること。社会人基礎力は、本気でやらないと身に付かない。刺激を与え合って、ワクワクしてほしい。これが学びにとって最も大切なことだと思う。

一億総「プロ」活躍の時代へ
米田瑛紀氏(エッセンス 代表取締役)

人生100年時代といわれ、75歳くらいまで稼いで飯を食っていかなければならない。会社もどうなるかわからない。そこで必要となるのが自立して生き抜く力、つまり社会人基礎力だ。「一億総活躍」を発展させた「一億総プロ活躍」という言葉を発信していきたい。私たちの事業では「他社留学」も手がける。大手企業の社員がベンチャー企業や地方の中小企業で週1回働き、他流試合や修羅場体験をしてきてもらうもの。転職しなくても異なる環境を体験できる。そこで学び、失敗して気付いたことを今の仕事に活かし、自立する力も身に付けられる。

人生は100年かけてやる自由研究
モデレーター:西村創一朗氏(HARES CEO 複業研究家)

いつもワクワクしたいという思いを持って仕事することが大事。今日集まっている人たちは、何にワクワクできるか見つかっていないかもしれないが、それが何かを考えるプロセスも楽しい。「人生は100年かけてやる自由研究」だと思っているので、そのテーマ探しのようなもの。これから行うワークショップでも、何にワクワクできるかを考えてみてほしい。

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第二部:ワークショップ 話して、考えて、手を動かして見つける、基礎力の手がかり

シンポジウム第二部は、3つの会場に分かれてワークショップが行われた。それぞれスピーカーや趣向、方向性が異なり、参加者の年代や立場にも違いが見られた。しかしいずれも、自分にとっての社会人基礎力とは何かを見つけるためのプログラム。情熱、好奇心、独自性、内省など第一部のパネルディスカッションで登場したキーワードを、目に見える行為として確認するプロセスを実践した。「自分ごと」として積極的に意見を言い、アイデアを出している参加者の姿が印象的だった。

【A会場】使ってみよう! 社会人基礎力
1+1=∞ 発想塾〜基礎編〜

幅広い年代層が参加。博報堂の矢野真理子氏がスピーカー、MCを務め、世の中の課題を発見し、アイデアでそれを解決するための過程をマーケティング手法の「KJ法」などを使って実践した。そして、それらを実際に適用した例も披露。さらに、「人をどう巻き込むか」「他人の人生をどう絡ませるか」を体験するため、2人1組になってどんな新事業を起こすかの企画と発表も行った。

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【B会場】自分らしい社会人基礎力を考える

「働き方の意味が、Work for LifeからWork as Lifeになる」といったスピーカーの講演の後、4〜5人ずつのグループに分かれてワークショップを開始。3つのテーマの中から1つ選んで議論し、模造紙にその経過や結果を書き出してプレゼンテーションを行った。スピーカーたちも各チームをまわり、一緒に考えたりアドバイスを出したり活発な時間となった。

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【C会場】社会人基礎力を発見する
WORKFIT 〜「人生の勝算」の見つけ方〜

若い年代が多かったのがこの会場。「強み発見ワーク」として、3人1グループとなり、リクルートホールディングスで使用している「WORKFIT=自分自身にフィットした仕事の見つけ方」メソッドの体験プログラムを実施。強みを発見するためにシートに記入したりトークをしたりして、グループごとに発表した。パネラーから容赦のないダメ出しもあり、熱く盛り上がっていた。

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第三部:レビューセッション WILL×MUST×CANが、社会人基礎力の出発点

ワークショップ終了後、再び全参加者が集まってレビューセッションが行われた。まずはゲストの伊藤忠商事人事・総務部長垣見俊之氏が総括のスピーチ。「昨日の常識は、今日はそうではなくなっている。会社の中でも同じ。情報を集めた上で思考を自立させることが重要だ。自分で考え、柔軟性を持って動く。これからは変革力や対応力が特に求められる時代で、社会人になる前からその意識を持って取り組んでほしい」と述べた。

そして、3つのワークショップ会場からの報告。どんな内容で何が目的だったかをスピーカーが話し、参加者代表も登壇して感想などを述べた。それぞれに垣見氏や伊藤氏などからコメントが付き、社会人基礎力を育むための具体的ポイントをアドバイスしていった。繰り返し語られたのは、「WILL・MUST・CAN」の相乗効果。何をしたいか言う(WILL)と、やること(MUST)が生まれ、実現できる(CAN)。描いた未来へ向かう出発点となる考えだろう。

また、徳島県から夜行バスでやってきた中学3年生の参加者が「留学を経て最終的に起業したい」と宣言するなど、次世代・次々世代の可能性を確信できるフィナーレとなった。

社会人未満の学生世代も多数参加したこのシンポジウム。日本社会の変容に伴い働き方はどう変わるかが示され、社会人基礎力を形づくるためのいくつもの選択肢を見つけることができた。とうの昔に社会人となった身を振り返り、自分の基礎力はできているのか自問する機会にもなったことを付け加えておく。

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鳥羽山康一郎

鳥羽山 康一郎

ライター/コピーライター/プランナー

文字を通じてのコミュニケーションを真ん中に置きながら、映像、画像などにも手を出しつつ活動。数多くのインタビューを通じ、その人の数だけの生き方に感動し感化される。自身もオフィスを持たない生き方を模索している。

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