地域でのキャリア教育から地方創生を考える

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地域でのキャリア教育から地方創生を考える
2017/05/09 (火) - 08:00
浅賀 桃子

都市部への人口一極集中が叫ばれています。日本の人口は2015年に初めて減少に転じていますが、一方で東京をはじめとする首都圏への人口一極集中傾向は近年変わらず続いていることが明らかになっています。 地方から都心への人口流出を食い止めるために各地方が色々対策を考えている現状ですが、その対策の一環として、「地域における早期キャリア教育を行う」ことの可能性についてご紹介します。

なぜ「早期キャリア教育」なのか

地方出身者が進学や就職を機に故郷を離れ、首都圏などへ移り住みそのまま定着する傾向が続いています。大手就職サイトマイナビが2017年卒学生を対象にUターン・地元就職に関する調査(※1)を行ったところ、地元就職を希望しない理由は1位「志望する企業がない(36.2%)、2位「都会のほうが便利(35.0%)」、3位「実家を離れたい(30.2%)」となっています。生まれ育った地域の魅力に気づかず、都会への憧れなどから地元企業への就職を希望しない学生が多くいることが伺えます。

また、文部科学省が各県の労働局資料からまとめた「大学生及び専門学校生の地元就職率」(※2)によると、「県内の専門学校を卒業後、そのまま同県内の企業へ就職した割合(①)」よりも「県内の大学を卒業後、そのまま同県内の企業へ就職した割合(②)」のほうが圧倒的に低いことが分かっています。例えば青森県の場合、①の割合69.0%に対し②は35.5%にとどまっています。青森県に限らず、山形県①81.0%②23.2%、山口県①80.0%②29.7%など、人口減少が続く県で同様の結果が出ています。

内閣府が実施した「小学生・中学生の意識に関する調査」(※3)においても、「あなたは、あなたの今住んでいる町や村が好きですか」との質問に対し、小学校4年生で91.3%あった「好き」の割合が、中学校1年生では79.5%、中学校3年生では66.8%にまで減少しています。学年が上がるにつれ好きと回答した割合が下がり、愛着を持てない若者が増える傾向が読み取れ、先述の専門学校生よりも大学生のほうが地元就職率が下がる点にも通じる結果になっています。なお、先述の結果は全国平均ですが、都市規模別(「大都市」「人口10万人以上の市」「人口10万人未満の市」「郡部・町村」の4項目)の区分でまとめると、これまた都市規模が大きいほど「好き」と答えた割合が高いことも明らかになっています。

これらの調査結果から、地方で生まれ育った若者が地方の良さを理解し、そのまま地方の企業に就職できるようにしていくための教育の実施が求められていると言えます。

徳島県の事例

政府は、小中学校で「地域住民や地域の人材・企業等の協力を得ながら、地域の特色を活かした教育活動を実施」、高校では「専門学校における専門職業人材の育成」として、スーパープロフェッショナルハイスクール(SPH)対象校を2014年度から制定するなど、地方創生へつながる地域でのキャリア教育を推進しています。

例えば徳島県では、徳島県立徳島商業高等学校(※4)にて「専門的職業人の育成」として地域に根差した商品開発などを行える地域コンサルタントの育成や、環境に関する調査研究や観光ツアーの実施など、実際に観光ガイドを行える人材の育成を目指すための特色あるカリキュラムを開発・実施しています。学校の設定科目として「観光ビジネス」のカリキュラムがあり、高校生が地域の魅力を伝えるツアーを企画し実際にガイドしたり、観光業界にて高校生が企画したモデルツアーの採用や商品化を図ったりといった先進的な取組を通して、「徳島ならでは」の教育を伝える環境を充実させているのです。

さらに、県内企業の強みを発信するべく、最先端の技術力を持つ中小企業の見学や女性社長比率が全国トップクラスであることから「女性活躍推進企業」のアピールなど、働きやすい徳島を打ち出し、県内企業への就職を促す試みも実施しています。地元の商工会議所や企業との連携で地域の活力となる取り組み(地域資源を活用した商品開発など)を行っている点も、福島の未来を見据えたキャリア教育となっています。

地域を担う人材育成のために

その他、広島県三原市では「地方創生×キャリア教育」の新たな取組として、地元企業と市内小学校の5・6年生が共同でスイーツの新たな特産品を開発し商品化を行っています(※5)。子供たちが実際にアイデアを出し合い、実際に企業を見学した上で開発企画書を作成し関係者へのプレゼンを行った結果、新たな商品が誕生するなど「地元企業で働くこと」へのポジティブなイメージにつながることが期待されています。

漠然と都心への憧れを持ち、地域から若い人材が流出することを食い止めるためには、地域自体への愛着心が高い小中学生など小さなころからのキャリア教育を、自治体と地元企業との連携を密にしながら行っていくことがさらに求められるのではないでしょうか。

 

※1 2017年卒 マイナビ大学生Uターン・地元就職に関する調査 株式会社マイナビ
https://saponet.mynavi.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/uturn_2017.pdf

※2 地方創生を担う人材の育成について 文部科学省 平成26年10月9日
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/kihonseisaku/h26-10-09/h26-10-09-s6.pdf

※3 平成25年度小学生・中学生の意識に関する調査報告書 内閣府
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/thinking/h25/junior/pdf_index.html

※4 DEEP IN TOKUSHIMA 徳島県立徳島商業高等学校
http://tokusho.tokushima-ec.ed.jp/SPH/?action=common_download_main&upload_id=1017

※5 瀬戸内元気都市みはら!地方創生×キャリア教育2016
https://mihara-city.jimdo.com/

プロフィール写真/浅賀桃子

浅賀 桃子

ベリテワークス株式会社  代表取締役・代表カウンセラー

ITコンサルティング会社人事などを経てカウンセラーとして独立。2014年ベリテワークス株式会社として法人化。ビジネスパーソンのメンタル不調者やキャリアチェンジに悩む方のケアを中心に、カウンセリング実績5,000名超。予防カウンセリングに強みを持ち、ストレス・メンタルヘルス・キャリアデザインなどのセミナー多数開催。キャリアコンサルタント、メンタル法務主任者、メンタルヘルス・マネジメント検定I種、ストレスマネジメントファシリテーターなどの資格を持つ。スヌーピー研究をライフワークとし、2015年NHKおはよう日本で紹介される。

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