「教師の仕事」と「子育て世代支援」を両立 自分の人生で目指すもの
渡部 幸
2017/08/04 (金) - 08:00

北海道小樽の私立高校の数学教師、宮原 卓さんは、同時に「子育て世代である両親とその子供たちをもっと元気にしたい」という目標に向かって活動を進めています。今回は、「教師の仕事」と「子育て世代と子どもの支援」の両方を行っている宮原さんの思いや、活動の内容、今後の夢などについてお話を伺いました。

―宮原さんは、なぜ先生になろう、と思ったのですか?

もともとは、受験で自分に何ができるんだろう、と思ったんです。数学ならできる、と思い、友だちに教えたら「わかった!」と言われたのがうれしかったんですね。その後、まず医学部を目指し浪人して予備校に行ったんですが、その予備校の先生の授業が衝撃的におもしろくて。「こんなおもしろい授業ができるんだ!教える仕事がしたい。」と思い、大学卒業後は予備校に就職しました。大学では予備校の先生が教えていた生物を専攻していましたが、教えていておもしろいのは数学だということに気づき、予備校でアドバイザーと数学の講師の仕事を数年していました。その時には、高校の教師なんて全く考えてなくて、教えること以外に生徒指導などやることがたくさんある教師なんてまっぴらごめんだと思っていました。

それが変化したのは、予備校に私立の高校から生徒が送り込まれてくる、という交流が始まってからです。高校のほうで、数学の講師を探している、誰かいないか、ということになり、私が担当することになりました。予備校講師をしながら、非常勤で高校の数学の講師もしていたのですが、「専任になってもらえないか」と言われ、予備校よりも生徒との距離が近い、より生徒の人生にも関われる高校の仕事もいいかもしれない、と思い、予備校を辞めて高校専任になり、通信制の大学で教員免許を取ったのです。

―では、その後、なぜコーチングや子育て世代支援の活動も行おう、と思うようになったのでしょう?

はい。もともとは、自分がアドラー心理学やNLP(神経言語プログラミング 心理学の一種)を学び始めたことがきっかけです。私、離婚をしているんですが、当時プライベートで奥さんと上手く行っていなくて、仕事終わったら家帰ってゲーム、休みの日はお菓子を買いに行って家でゲーム、という日々で、「俺、このまま一生終わるのかな」と思って、何とかしよう、とアドラー心理学などの自己啓発系の学びを始めました。

その後、マンガで知るNLPという本をコンビニで見つけておもしろいな、と思ってセミナーを受講し、アドラー心理学をベースにしたコーチングを学んで、自分がまず変わりました。今までは、周りのせいにしていたのが、原因は自分側にある、自分が行動することで変えられるものがある、と今まで自分になかった主体性に視点を広げられるようになりました。教師の仕事でも、今までは「俺は教えることはしっかり教えてるんだから、あとはやらないほうが悪いんだ」と思っていたのが、自分にも原因があるんじゃないか、と思えるようになったのです。このスキルを生かしてもっと生徒が自分から動いてモチベーションを上げることができるのではないか、もっと生徒が自分で勉強するようなことはできないか、と考えるようになりました。

ただ、ここで生徒だけに関わっていても充分ではない、とも感じるようになりました。確かに、生徒と関わって学んだスキルを活用していくうちに、生徒が「やってみよう」と勉強や進路に自分から進んで取り組むようになっていったのですが、三者面談でせっかく生徒が「自分はこうなりたい」と言っても、親が「そんなことできるわけがない」「あんたには無理」と子どもの可能性にふたをしてしまうのです。親や環境も変わる必要があるのではないか、親がワクワク笑顔になることで、子どもももっと元気になるんじゃないか、とコーチングやセミナーでの学びで子育て世代を支援しようと思うようになりました。

―その後どんな活動をするようになったのですか?

まず、札幌に目標達成や、夢実現、といったテーマで著名なアメリカ人の講師を招いて講演会を開催しようという企画に奔走しました。1500人の会場を借りて、大学生などのボランティアに協力してもらい、資金も募りながら、子どもだけではなく、子育て世代の両親たちにぜひたくさん来てもらいたい、と活動を進めました。最終的には、私が自己負担のお金を持ち出すことになりましたが、600人以上の人々に参加してもらうことができました。

サムネイル

また、現在は、教師の仕事の中で、生徒からの相談を受けるときや、親との面談の際など進路指導でコーチングを活用しているのと同時に、親世代にもっと認知の仕方や、コミュニケーションの仕方に気づいて変わっていってもらいたい、元気になってもらいたい、という思いでコーチとしてセッションも行っています。教師以外の活動は、私立の高校のOKをもらっていますが、今はボランティアとして実施しています。

―教師の仕事の中で、コーチングを使うようになってどんな変化がありましたか?

進路相談の進め方が変化しました。今までは、生徒が「ここに行きたい」と志望校を言ったときに、模試の数値の現状から「難しい」とか指導の話をしていましたが、コーチングを使うようになってから、将来何がしたいのかゴールからさかのぼって、そのためにはどういう勉強がいいか、やりたい仕事の内容によっては、大学じゃなくて専門学校のほうがいいんじゃないか、というような話ができるようになりました。生徒のほうも、そのように自分の将来のやりたいことが明確になると、周りに何か言われたとしても、志望校に対するブレがなくなりました。

―教師の仕事の中でも充分学んだ心理学のスキルは活用できていると思いますが、なぜもう一つの活動を進めたいのでしょうか?

そうですね。教師としての関わりは、どうしても学校の生徒やその親御さんに限られるところがあります。自分としては、学校の先生としてもやりがいを感じていますが、もっと広いフィールドでやってみたい、もっと多くの親世代の大人を元気にしたい、もっと多くの人に貢献をしていきたいという気持ちがあります。今は、教師の仕事と両立して行っていきますが、いずれは、独立してセミナー講師の仕事を行っていきたいと考えています。

コーチングも続けていきますが、最近自分はやはり「話すのが好きなんだ」「伝えることがしたい」と思うようになりました。自分が話したこと、伝えたことで影響を与えたいのです。ですから、今親世代のためのセミナーを計画しており、どんな内容を伝えたら役立つか、どんな内容が聞きたいと考えているのか、親御さんの世代の方々にインタビューをして話を聞いているところです。

また、自分は北海道で生まれ育ちましたので、北海道を元気にしたい、という思いもあります。NLPやアドラー心理学を学んで、それまでは、流れに乗っていただけの感じだったのが、自分の生き方を自分で考えられるようになりました。他の人たちにも、先生だから、主婦だから、地方に住んでいるから、と言った枠にとらわれた生き方は違うんじゃないか、ということに気づいていって欲しいと思っています。

サムネイル

宮原 卓

北海道大学卒業。小樽市の私立高校教師。
高校の頃から数学を教えるのが好きだったが、予備校での授業のおもしろさに衝撃を受け、予備校講師を目指す。大学卒業後は複数の予備校で数年教え、その予備校と現在勤務している高校とのご縁から、勤務校へ時間講師として出講する。高校で仕事のおもしろさを知り、予備校から高校の先生になる。現在の職場は13年目。高校3年生の担任、進路指導部所属。アドラー心理学やNLP、コーチングを学び、子どもの主体性を伸ばし、親世代を元気にするために講座の企画、コーチング、セミナー実施などの活動を合わせて行っている。

Glocal Mission Jobsこの記事に関連する地方求人

同じカテゴリーの記事

同じエリアの記事

気になるエリアの記事を検索