ライフ・シフトの選択肢になる? 地方企業の事業承継

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ライフ・シフトの選択肢になる? 地方企業の事業承継
2018/04/04 (水) - 07:00
荒木 三香

地方で深刻化している、中小企業の後継者不足を解決する「事業承継」。
都市部で働くビジネスパーソンの、新たなライフ・シフトの選択肢として注目される、地方企業の事業承継について考えてみましょう。

後継者が決まらない、地方の中小企業

昨年来、国会でも喫緊の課題として取り上げられている、全国中小企業の「事業承継」問題。
以前このサイトで書いた別の記事でも少し触れましたが、地方の中小企業にとって、この事業承継問題とも関係する、後継者不足は深刻な問題となっています。すでに後継者が決まっている中小企業も、そのほとんどが親子などの身内、もしくは社内の従業員。社外の人を迎えいれるケースはわずかで中小企業庁でも、この点については大きな問題として捉えているようです。

国内の企業数は減少傾向にあり、2009年から2014年にかけて39万社が減少しています。
今後5年間で30万以上の経営者が70歳になるにもかかわらず、6割が後継者未定。70代の経営者でも承継準備を行っている経営者は半数とのこと。地域の事業を次世代にしっかりと引き継ぐとともに、事業承継を契機に後継者が、ベンチャー型事業承継などの経営革新等に積極的にチャレンジしやすい環境を整備すべきとのことで、事業承継5ヵ年計画の目指すべき姿が提唱されました。
国を挙げて取り組みだした「事業承継」への政策により、今後5年間で早期承継のインセンティブを強化し、後継者や経営者による経営の合理化や、ビジネスモデルの転換などの成長への挑戦を支援する取組なども行われます。(※)

まだまだ存在する、多彩な活躍の場

筆者の地元・札幌に、実父の友人でもある中小企業の経営者が数多くおりましたが、皆さん口を揃えて会社の継承の問題に深刻に悩まれていたことを、20代の頃から幾度となく聞かされていました。
もう少し早く、現在のような事業承継ネットワークなどの仕組みやサポート組織、そして現在、国の政策として始まった会社を譲渡する際の税金の優遇措置などがあれば、計画的に早期継承できただろうに…と歯がゆい思いが残ります。
今後は徐々に、そうした取組みを浸透させながら、事業が円滑に継承されていくことを願います。

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そうしたなか、都心で充分に経験とスキルを身につけた世代が、地方企業で再び活躍できる可能性という意味では、私たちが想像する以上に多くあるようです。

中小企業の経営者には、経営について相談できる相手がいない、との悩みが多いのも事実です。
いまもっとも期待させるのは、大企業などで働いてきた、スキルの高い経営人材の活用です。
都心で経営幹部を経験した人材などを、地方の中小企業の次期経営者候補とする場合や、後継者をサポートする経営幹部として経営に参画しやすい環境を整備する、という施策も始まりました。

また事業承継の支援者として、実際に事業承継を経験した経営者OB人材を活用するなども、先述の中小企業庁の「事業承継5ヵ年計画」の施策の一つです。

深刻な日本の中小企業の抱える問題

わが国における中小企業の割合は、2017年版中小企業白書によると99.7%。大企業はわずか0.3%です。この国が、いかに中小企業と、その従業員で成り立っているかがよくわかります。
中小企業庁の調べによると、60歳以上の経営者のうち50%超が廃業を予定しており、特に個人事業主においては、約7割が「自分の代で事業をやめるつもりである」と回答している現状です。

しかし、その廃業予定者のなかでも3割の経営者が、同業他社より良い業績を上げている、と回答しており、今後10年間の将来性についても4割の経営者が、少なくとも現状維持は可能と回答しています。
このままでは日本全体の雇用問題のみならず、技術やノウハウまでもが失われる、という深刻な事態にまで発展することが懸念されています。

一方で、早い段階で経営者が交代した企業や、若年の経営者が経営する企業は、利益率や売上高を向上させており、このことからも計画的な事業承継は、成長の観点からも重要であることがわかります。

必要なスキルや知識は、学び直せば対応可能

地方企業の経営者には、自社の経営の今後についてや、人材確保についてなど、中小企業ならではの悩みごとを相談できる相手がいないことが多いといいます。経営者一人で悪銭苦闘しながら、すべてを考え判断している場合も多く、ブレーンとなって動いてもらえる人材を渇望しているケースが多いといいます。

経営についての知識やスキルなどは、これから学び直しても遅くはないといいます。
むしろ大切なのは、今までとは違う環境、仕事の進め方、その業界や地域の特性など、過去の経験とはまったく別の状況であっても、そのなかに一緒に入って自ら学び、あらたな信頼を勝ち取る人間力、コミュニケーション力が、最も重要ともいわれます。

都心で長く働いて経験を積んだ人材が、地方の中小企業で経営者の右腕となってサポートする、もしくは次期経営者として、その地域で根付いてきた事業をしっかり継承することは、両者にとっても、また日本全体としても、今後ますます重要視されることになるのではないでしょうか。

何を学び、どう自身のライフ・シフトにつなげるのか…その方法は人それぞれで正解はないものでしょう。
しかし、確実にせまる日本各地の雇用問題、人口減少、少子高齢化、そして個人の人生の再選択…
都心に集中する人材の“活躍の場”は、地方企業においては、想像する以上に存在するのです。

(※)参考: 経済産業省・中小企業庁H29年7月
中小企業の事業承継に関する集中実施期間について(事業承継5ヵ年計画)

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荒木 三香

Couleuve  -クルーヴ-  代表
NPO にじ色キャンパス  代表
キャリアコンサルタント

東証一部上場オフィス構築専門商社にて、オフィスデザイナーとして「働く空間」を提案。東京・札幌・千葉・神奈川で複数の職種・雇用形態を経験したのち、夫の転職で山形へ移住。色彩心理学を元にしたセラピーや、心理カウンセリングを行う為、起業。同時期に東日本大震災復興支援のためのNPOを設立、行政や中間支援団体等と協働した支援活動にも取り組む。日本ストレスチェック協会のファシリテーターとして、ストレスマネジメント、メンタルヘルス講座等の開催、キャリアコンサルタントとしての活動も開始。その他 数種の教室運営など自らが、地方移住で複業とパラレルキャリアで活動中。

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