どんな人にも起こり得る「生きづらさ」がなくなる社会を目指して

1961_main
cat_social
どんな人にも起こり得る「生きづらさ」がなくなる社会を目指して
2018/02/09 (金) - 07:00
加藤 晶子
このエントリーをはてなブックマークに追加

「マイノリティ」という言葉を聞くと、LGBTなどのセクシャルなマイノリティをイメージする方も多いと思います。
しかし、実際には、どんな人も抱える可能性のあるさまざまなマイノリティ要素があり、生きづらさを抱えている人たちが身の回りにも当たり前にいるのが社会です。そんな、普段はなかなかオープンにされず、見過ごされやすいマイノリティの方にも焦点をあて、誰もが生きやすい社会を目指す、NPO法人バブリングの代表の網谷氏に想いを語っていただきました。

1961_profile

網谷 勇気(あみや ゆうき)さん
NPO法人バブリング代表

1978年、東京都生まれ。情報サービス大手企業、ITベンチャー企業などを経て、2014年にNPO法人バブリングを設立。主にメディア出演や学校等での講演、ワークショップ開催を担う。また同年より、児童養護施設から社会に巣立つ子どもたちの自立支援に取り組むNPO法人「ブリッジフォースマイル」にて勤務、現在は理事を務める。

気軽に集まれる飲み会からのスタート

――バブリングというNPO法人を立ち上げようと思ったきっかけは何だったのですか?

実は20代の頃に何年か開催していた飲み会が、そもそもの原型なんです。最初は、「友だちの友だちと、友だちになる」というコンセプトで、気軽に仲間を誘いあえるような飲み会でした。数年で100人規模に成長し、イベント形式にしたほうがいいだろうと思い、イベントに移行したのが始まりです。

――そこまでたくさんの人が集まってくれたのにはどんな魅力があったのでしょうか

口コミの威力がすごかったですね。多分、みんなの居場所になっていたのだと思います。自身がゲイだということもあって、セクシャルマイノリティの方も多く、参加してくれたゲイの方が、カミングアウトしてくれるケースも多かったです。日常生活で、セクシャリティって確認しないですよね。でも、その場では自然と、「どっちなの?」みたいに気軽に聞ける場があった。見た目がゲイっぽい人が異性愛者だと分かったり、日常生活では起こりえない刺激と関わりがあったことが、人が集まった理由だと思います。

――みなさんが心から安心できる居場所だったのですね

そうですね。居場所ということで思いだすエピソードが一つあるのですが、一旦そのイベント活動を止めた後の、2012年にゲイの友人が自殺してしまったんですね。飲み会にも来てくれていたので、あの場が他の人との交流の場で、少なからず居場所だったのではないか、その居場所だったものをなくしてしまったのではないかと考えました。
そのことがきっかけとなり、自分はどういうことをしていきたいのか、どういう社会を望んでいるのかということを、考えるための旅に出ました。当時住んでいた青森から、3泊4日で北海道に行き、旅行の最中に自分なりの答えを出そうと決めていました。

――答えは見つかりましたか?

はい、見つかりました。やはりカミングアウトが一番のキーワードだと気づいたんですね。 ただ、最初から、セクシャルマイノリティだけを対象にしようと思ったことはないんです。私自身もゲイではありますが、そのことが私の中では大したことではなくて。セクシャルマイノリティの人権についての活動をしている方はいっぱいいて、それは自分がやることではないと思いました。そして、目に見えない生きづらさや苦しさを抱えた人のほうにずっとアンテナが向いていることに気づきました。イベントや飲み会などで、打ち明けてくれた人がいたからですね。

――セクシャルマイノリティ以外のマイノリティの方への想いが強いことには理由があるんですか?

あまり自身のマイノリティ要素には興味がないというのが正直なところです。10代の頃に自分の抱えているマイノリティ属性が抱えきれなくなった時期があって、そのときに友達が凄く支えてくれたんですね。その当時の友達と生きていくっていうのが普遍的なテーマになっています。その友達と生きていく社会をよりよくするという意味では、友達にいつか起こりうるかもしれない病気とか、もしかしたら抱えていたかもしれない体験とか、そういうこと自体も僕の問題になります。

もう一つの理由は、カミングアウトってするばかりではなく、されることもあるので、誰でも当事者になりうるということです。だから社会に生きている人みんなの先入観を崩すようなかかわりをしたいと思ったことがあります。たとえば見た目が女性の方に、「彼氏いるんですか?」ではなく「付き合っている人いるんですか?」と聞けるとか。含みをもたせた質問ができるかどうかで受けての人って関わり方が変わってくると思うんですね。

健康で性的にも異性愛者で、犯罪被害にも巻き込まれたこともなくて悪いことをしたこともない、というような前提でコミュニケーションとるから生きづらいのであって、前提を崩すと、全員が全員違う。特定の属性の人に対してアプローチしていくのではなく、色々な人が同時に存在できる社会、何かを開示したい人には開示できる社会をつくりたいという結論がでました。

1961_sub1

法人設立で再確認した仲間との連携

――想いを温め、1,2年後に団体設立になりますが、事業内容は決めていたのですか?

いや、決めていなかったですね。少なくともイベントはやろうと思っていましたが。 まずはメンバー集めから始めました。創りたい社会の姿は見えていましたが、それをどう具現化するかはメンバーを集めてから考えようと思っていました。あるべきビジョンやミッション、カミングアウトをどう定義するかの根本的な価値観、考え方を合わせようと数か月話し合いましたね。実は、当初、本当にもめたんですよ。

集めたメンバーは異性愛者と同性愛者が半々でした。こだわってそうしたのですが、特にセクシャルマイノリティをオープンにしていないメンバーから、自分たちの問題解決をしていないなかで、他のマイノリティのサポートなんて早いという意見が出ました。でも、僕の意向も強かったので、コンセプトの中にもセクシャルマイノリティやLGBTという言葉は入れずに始めました。2015年10月にイベントを最初にやったとき、メンバーの一人から「やっと網谷がやりたいことが分かった」といわれて、そこからかみ合い始めましたね。

――最初時間をかけたことで、これからもぶれずに行かれますね

はい、まさにそうですね。

――では、具体的なNPO法人のメインの活動を教えてください

現在は、バーの運営と、イチゼロイチイチというイベント、マイノリティの方へのインタビューと、ワークショップの開催です。

――それぞれどんな活動をされているのですか?

バーは、週に1回新宿のゴールデン街でオープンしています。カフェのようなたたずまいでもあるので、ふらっと来られるお客さんもいて、普通のバーと変わらないですよ。一つ違うこととしては、7名のカウンター席に3人のスタッフをつけていることですね。話すためにいらっしゃる方も多いので、そうしています。実際みなさん長居をされるので、経営的にはどうかと思っていますが(笑)、くつろげる場になっているのは嬉しいです。

マイノリティの方へのインタビューは、バブリングのWEBサイトへ掲載しています。さまざまなマイノリティ要素のある方を取り上げて、月に1回位のペースで更新しています。セクシュアリティ以外のマイノリティの方ということで、神社の息子さんをインタビューしたこともありますね。

1961_sub2_2
運営するバーにて

最大のイベント「イチゼロイチイチ」

――活動のなかでも大規模なのがイベントですね

はい、年に1回カミングアウトデーの10月11日に開催しています。メインのコンテンツはトークセッションと展示です。トークセッションは、色々なマイノリティの方に登壇していただき、カミングアウトや生きづらさについてお話しいただいています。また、展示はマイノリティについて知っていただくことが目的です。一般の方には知られていない病気などもたくさんあって、昨年はマイノリティ要素のある難病や希少疾患も取り上げて展示しました。

イベントの目的自体は、カミングアウトデーの啓発なんですが、場に来てもらって、自分が抱えている、オープンにいえていなかったことに気づいていただくことも多いです。 2016年はテーマが家族だったので、「ありがとう」でも「ごめんなさい」でもいいから、普段いえない気持ちを家族に伝えてほしいと思って開催しました。
イベントに来て感じてくれた男の子が、「僕、今から母のお墓参りに行ってきます!」といって、イベントの最中に出かけていったんです。そんなふうに、自分自身や大切な人と向き合って行動する日にしてもらえたらと思っています。

1961_sub3
イベント「イチゼロイチイチ」の様子

やりたいことに一歩踏み出せない方へ

――やりたいことはあるけど、一歩を踏み出せない方へメッセージをお願いします

所属先がちゃんとあって、軽く踏み出すということであれば、踏み出して嫌だったら辞めてもいいと思うんですね。死にはしないから。でも、踏み出した先で出会いがあり、知らなかった世界が広がって、自分がどんどん変わっていく手ごたえを感じる瞬間がたくさんあります。これは踏み出した先にしかないと思うので、好奇心で踏み出してほしいなと思います。

もう一度いいますが、ダメだったらやめてもいいんです。

僕もたくさん失敗といえるようなことをしてきましたが、そのすべてが学びと思っているので、後悔したことはないです。例を挙げると、僕の中で抹消している仕事の期間が3か月あって(笑)、ちゃんと考えずに転職したら全然自分に合わない職場ですぐにやめたという経験なんですけど。そこで気づいたのは、ちゃんと考えずに転職先を決めちゃいけないということ。

もともと不器用なところがあって、はたから見ると凄く遠回りしてきたようで。だからこそ色々な事をやってきて、向いていることや面白いと思うことを切り分けてこられたのだと思います。10年かけてやっとNPOやバブリングという自分にしっくりくるエリアに来たなという感じがあります。だから、やりたいことがあるなら、何でもやってみてほしいと思っています。

【参考】NPO法人バブリング

katoakiko

加藤 晶子

国家資格キャリアコンサルタント

銀行・株式会社リクルートキャリアでの人事・営業経験を経て、2011年にキャリアカウンセラーとして独立。若年層のキャリア支援を強みとし、今までに3,000人以上の就職・転職支援実績を持つ。2015年からの2年間はNPO法人で就業。好きなこと・得意なこと・情熱をかけ合わせた、心から輝ける場所を見つけることが得意。現在は、主に20代~30代向けに、ライフワーク実現のためのワークショップ開催・個人カウンセリングを中心に活動している。

このエントリーをはてなブックマークに追加
サムネイル
サムネイル
サムネイル