NPOというキャリアー大手企業を経て選択した新しい働き方
加藤 晶子
2019/01/28 (月) - 12:00

NPOに憧れはあるけど、安定したイメージがないことや給与水準の低さなどを理由に就職を躊躇する方も少なくないと思います。そのようななか、今回は大手企業を経て、ライフイベントの変化に伴い、NPOという就職先を選んだ二人にインタビューを行いました。もともとはバリバリ企業で働いていたお二人に、どのような心境の変化があったのか、NPOで働くということは企業とどう違うのか、お話していただきました。

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有坂 絢子(ありさか あやこ)さん

新卒でIT系大手メーカーに入社し、その後大手教育系出版社に転職。幼児・小学生向けの教育プログラム開発を主に担当。夫の海外赴任に帯同し渡英し、イギリスで育児をしながらヨーロッパの幼児教育を学ぶ。帰国後の2016年第二子の出産を機にキャリアを模索するなかで出会った放課後NPOアフタースクールへ入職。

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島村 有紀(しまむら ゆき)さん

新卒で大手の教育系企業へ入社し、5年間勤務。保育園の立ち上げなどを担当したのちに、公共政策を学ぶために大学院へ進学。卒業後に大手のコンサルティング会社に入社し、福祉・教育分野の調査・コンサルティングを担当。第一子と第二子の出産をはさみ、働き方を変えたいとキャリアを模索するなかで、産後ケアを支援する一般社団法人を経て、2016年放課後NPOアフタースクールに出会い入職。

NPOという選択も、不安はなかった二人

――放課後NPOアフタースクールへ入職を決めたきっかけは?

有坂絢子(以下、有坂):イギリスにいたころ、紛争地域の子ども達や貧困根絶の支援、慈善団体等が(当時の日本よりもずっと)社会的地位を得て活動しているのを見ていて、営利目的でなく社会貢献活動を生業にしていくことに興味をもっていました。しかし帰国してみると、たとえばイギリスでは身近だったシリア難民支援とかは自分から心理的距離も遠くなっている。一度元の出版社に戻ったものの第二子の出産を機に、二人の子育てにしっかり時間を注ぎながら、自分の経験を活かしてまずは日本社会に対してできることを新しい働き方含めて探していて、出会ったのが放課後NPOアフタースクールでした。偶然副代表が友人であったり、島村さんがいたことも決め手の一つだと思います。

島村友紀(以下、島村):ファーストキャリアで保育園の立ち上げを経験したこともあり「子どもの場を創る」仕事に再度関わりたいという思いがずっとありました。コンサルティング会社で教育や福祉に関わりながら良い経験を積ませていただいていましたが、1人目を出産して復帰したときに、働き方を変えないといけないなと思ったことが直接的なきっかけです。自身の子育てを通じて、子どもたちが保育園や学校だけでなく地域や社会とつながるにはどうしたらいいんだろうと思っていたところに、放課後NPOアフタースクールが地域や企業、色んな人を巻き込んで子育て支援をやっている様子をHPで見て、こんなことができるんだと驚きもあり、興味をもちました。そして、有坂さんがちょうど同じタイミングで活動に関わっていたのも大きかったですね。

――お二人は元々知り合いだったんですね

有坂:島村さんとは大学時代からの友人でもあり、同じ会社で働いていた時期もありました。 入職時だけでなく今も築き上げた信頼関係があるから仕事上もやりやすいことがたくさんあるなと思っています。

――NPOに勤めることの不安はなかったですか?

有坂:長く勤めていて大好きだった前職を夫の赴任について辞めるときに相当悩み一度思いきったので、今回不安は全くなかったです。二人の子育てと仕事をどう両方楽しくやっていこうかという気持ちにシフトチェンジしていました。どうせ時間を割いて子ども達を預けて働くなら、生涯かけて本当にやりたいことをやろう、と決めていました。

島村:放課後NPOアフタースクールへの入職を決めたときには、不安というよりは、新しいステージに入るというワクワク感がまさりました。私も有坂さん同様、コンサルティング会社を辞めるときが一番考えましたし不安も大きかったのですが、一度辞めてしまってからの入職だったので、不安はあまり感じませんでした。

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――現在の仕事内容について教えてください

島村:事務局長として、本部業務の統括、バックオフィス系全般を担当しています。今年一年は人事制度の作成~導入までメインでやってきました。あとは経理業務、労務業務などに携わっています。ここ2,3年で団体規模が大きくなっており、仕組みや運用を構築しているところなのですが、その際できるだけ現場のスタッフの負担が軽くなるように日々メンバーと相談しながら進めています。その他、事務局長として外部の方との交流会などに参加する機会も増えてきましたね。

有坂:エリアマネージャーとして、団体が運営するアフタースクールのマネジメントを行っています。具体的には、各学校や行政との交渉や調整業務、責任者のサポート、スタッフの採用などです。新規の開校の際は子ども達の居場所づくりから、保護者への説明など、立ち上げの業務全般を担います。

NPOならではの課題について

――お仕事をするなかで、NPO法人ならではの課題というのは感じられますか?

有坂:私を含めて、団体の掲げるビジョンに共感して入ってきたスタッフがそろっていて、理念への共感度や想いの強さは、通常の企業よりもずっと上だと思います。でも、組織が大きくなっていくなかでも、皆でこのDNAを共有し、理想を追い続けながら、持続可能にするための仕組みもつくっていくこと、たとえば、ある程度収入を意識するコミュニケーションは、少し難しいと感じることの一つです。利益追求じゃないがより多くの人がこれを生業にしていけるようにしないと、続かない、これ以上拡大できない。ただ「部活の雰囲気・プロの仕事」と私たちは掲げているのですが、皆本当に同じゴールを目指す部活のメンバーみたいなので、しっかり時間をとって話し合うと分かり合える・解が見えてくる、そしてより信頼が生まれるというのも見えるし、やりがいを感じ面白いところだなと思っています。

島村:ビジョンや想いを一つにしながら活動を拡大していくことがNPOならではの難しさであり、楽しさであると実感しています。
事務局という立場からは、各拠点・スタッフの自由度や楽しさ、ワクワク感や多様性を確保しつつ、一方で経営的にはどう効率化していくか、というチャレンジをしています。子どもたちの放課後に取り組むこの仕事に前向きに、安心して取り組んでもらえるよう、仕事の仕方、勤務時間や処遇面含めて改善していくことで、NPOで働くってこんなにも楽しい!という新しい働き方を具現化できたらいいなと思っています。
団体が大きくなるなかで色々と試行錯誤も多いのですが、メンバー同士の信頼関係があることが、大きな強みだと思っています。失敗してもそんなに気にしないし、試行錯誤のプロセスを信頼できる人と歩めているという安心感があります。ここの関係がビジネスライクだと、お仕事として続けていくのが難しかったと思います。

NPOだからできること

――今後のキャリアについては、どう考えていますか?

島村:NPOフローレンスさんが取り組まれている「こども宅食」等、コレクティブインパクトの事例も増えてきて、NPOの活動フィールドもより広くなってきていると感じています。やりたいこと、チャレンジしたいことがあったら、皆でアイデアを出し合い、企業や地域の力を借りながら仕組みをつくっていくフェーズになってきて、NPOで働くことに、より可能性を感じています。今後はもっと幅広い方と組んで活動を広げていきたいですね。
また、NPO自体の働き方や社会的地位という意味で、ここで働くことがいいキャリアチェンジになるというモデルをつくれたらいいなと思っています。

有坂:会社員時代のほうが「今後のキャリア」について悩んでいた気がします。会社の枠組みや企業の立ち位置でポジションを考えてしまっていたのですね。いまは社会のなかで私は何に役立つか、どんなことが、誰とできるのか(しがらみなく枠組みなくどんどんできるぞ!)という視点に変わりました。組織は小さくなりましたけど、活動のフィールドや視野は広がった感じです。

――放課後NPOアフタースクールの事業として今後実現したいことはありますか?

島村:シンプルに子どもが本気で遊べる場所、心許せる場所をつくれたらいいな、と常に思っています。それをできるだけたくさんの大人が見守っていけると、さらにいいなと思います。

有坂:誰にでもどんな子にも心の拠り所になる居場所と上質な体験・学びを。公立・私立のアフタースクール運営を見ていると、教育格差が広がっていく懸念も実は目の当たりにしています。でも私たちだからできること、たとえばかなりハイレベルのプログラミング講座を安価にたくさんの子に提供する。市価では高額すぎて通えないご家庭の子でも、ぐぐっと伸びる子がたくさんいるのです。そういう芽をかぎりなくたくさん発見して伸ばすきっかけになれることを、目指しています。

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【参考】特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール

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