『自分らしく生きる』が最優先。夫婦2人、起業までのストーリー

1836_main
cat_independence
『自分らしく生きる』が最優先。夫婦2人、起業までのストーリー
2018/01/19 (金) - 07:00
久保田 一美

結婚というライフイベントを迎えるタイミングで、夫婦ともに「起業したい」という希望が同時にあっても、多くはどちらかが「企業」で働き続け、どちらかが「起業」のように、選択することが多いのではないでしょうか。今回ご紹介するのは、“自分らしく生きる”を最優先に、同時に起業を歩みだした1組のご夫婦。チャレンジしている2人から感じるものがきっとあるでしょう。

目指した消防士は生き方ではなく職業だった

今回ご紹介するのは、現在東京都にお住まいの佐藤健作さん、志乙里さんご夫妻。まさに2018年から夫婦それぞれが、それぞれの分野での起業を本格的にスタートしようとしています。

健作さんの以前の職業は消防士。そして、志乙里さんは看護師でした。それらの専門職を辞めて起業をスタートするには、深く辛い出来事と、お二人が大切にしている生き方のビジョンがあります。

まずは健作さんのこれまでの軌跡を振り返りましょう。健作さんのご実家は自営業。ご両親ともに働いている環境で育った健作さんの幼少期は、勉強嫌いで、ヒーロー好き。多くの男子がはまったであろう、ウルトラマンに憧れをもっていました。

そんな健作さんが消防士を目指すことになった原体験は、2004年に起こった新潟中越地震。震源地に近かったご実家で、将来のことを漠然と考えていた高校時代でした。被災地で、がれきの中から子どもを救い出すハイパーレスキュー隊の姿を目の当たりにすることで、自身の将来への気持ちが固まります。

しかし、その就職試験は想像以上に苦難の道。高校を卒業して、東京に下宿をしてまで挑戦するも叶わない。一旦、恩師の紹介で国家公務員の仕事に就きながら勉強に励み、21歳にしてようやく消防士への夢を掴みました。

1836_sub1

その後、28歳までは消防士を務めるのですが、実は健作さんのなかではそのまま働き続けることへの疑問が湧いてきていました。そのきっかけは、消防士となってわずか1年目、2011年3月に起こった東日本大震災。新潟中越地震を経験して消防士を目指した健作さんにとって、未曾有の震災に一刻でも早く現地で人々を救いたい、助けに行きたいと思うも、自身は東京の消防士としての職務を遂行するために東京に残らなければならず、自分の生き方や人生の選択に大きな矛盾を感じることになりました。このとき、消防士は自分の生き方ではなくて、「職業だったのだ」と気づいたそうです。

30代を目前に揺れる女性のキャリア

一方、志乙里さんは富山県の出身で、地元愛の強い小さなコミュニティで育ちました。近所を歩くも知らない人はいない、常に人の目を気にして生きる狭いコミュニティが窮屈でとてつもなく嫌だったそうです。だからこそ、「田舎を出たい。東京に行きたい。」と思い、東京のある大学付属病院に看護師として就職します。

1836_sub2

しかしここで、志乙里さんも看護師となってわずか2年目に、自分の生き方について深く考えさせられる辛い経験をします。それは、地元の友人がある日、交通事故にあい亡くなってしまったのです。当時志乙里さんは、念願の東京での生活をスタートするも、病院での毎日の仕事に愚痴をこぼす日々。そんなときにおこった友人との突然の別れ。「人生は短い。こんな愚痴をいっている人生は嫌だ」と思い始めました。

それからは、自分のやりたいことを言葉にして発信するようにしたり、1日1日を大切に過ごしたりするなかで、「何か始めるのに30歳からでは遅い」と感じ、27歳でそれまで勤めていた大きな病院を退職し、起業しようと行動に出ました。自分のやれることは何か、と思ったときに目の前に「ウェディング」に関することがあったといいます。

ウェディングに関する起業に関してのルーツは、志乙里さんの学生時代に遡ります。大学生のときに、ホテルでのウェディングのアルバイトをしていた頃、一生のうちの一大イベントである華やかな結婚式の仕事は、ただただ楽しかったそうですが、20代の半ばになると友人達の結婚式に呼ばれることが多くなり、ホテルでの式や披露宴の演出に、「記念すべき日がお決まりの型になっていて良いのだろうか」、「二人らしさをもっと大切にした方が良いのではないか」という気持ちが湧いてきました。

また、看護師を退職してウェディングの仕事に携わる中で、この思いがより大きくなってきた時に、ちょうど健作さんとの出会いがあり、自分たちの結婚式は、自分たちらしい、思いがいっぱい詰まった1日にしたいと思うようになりました。

地方を活性化するウェディングビジネス

佐藤さんご夫妻の結婚式の場所に選んだのは、北海道北竜町。志乙里さんが「ひまわり」の花が大好きだったことに由来します。また、健作さんのご実家が自営業であったことから、これまでの恩返しも兼ねて家族で旅行も兼ねたい。そうするとお盆か年末年始のシーズンしかないことから、ひまわり畑が満開になる2016年の夏に決めました。

1836_sub3

このオリジナルのウェディングには、北竜町の佐野豊町長をはじめ、商工会青年部の方々、寺内昇・郁子ご夫妻などが協力してくださり、地元ポータルサイトにも記事として取り上げられました。(※1)

結婚式の日の朝、式場のアーチづくりは新郎の健作さんをはじめご家族の皆さんでの手づくり。そして青空のもと、家族とお祝いに駆けつけてくださった北竜町の方々に囲まれ、人前式を行いました。フラワーシャワーはひまわりの花びら。その花びら摘みをしてくださったのは、北竜町商工会青年部の方々です。

挙式終了後のランチパーティは、佐野豊町長が手配してくださった保養所にて、地元のサンフラワーパーク北竜温泉・山森和樹シェフが真心込めたお料理を用意してくださいました。そのほか、フレッシュサラダや、スイーツ、〆のフルーツは「ひまわりスイカ」。このスイカにウェディングケーキ入刀ならぬ、ウェディングフルーツ入刀で最高に盛り上がりを見せます。

1836_sub4

このような世界に1つだけのオリジナルウェディングこそ、大切な人生の門出にふさわしい。そして、自分らしく生きることを最優先する2人にぴったりだと考えた志乙里さん。

志乙里さんが2018年に本格的に起業をスタートさせる事業は、これらの原体験からの「地方を活性化するウェディングビジネス」です。自分たちの体験が、ずっと心に残る思い出だけでなく、地方の名所を紹介する機会になったり、地産地消を目指す農家や宿泊施設、飲食店の方々などの町の活性化に繋がる良き機会となると思い、これがビジネスアイデアとなりました。また地元の方々がウェディングを作っていける仕組み作りも目指します。

1836_sub5

加えて中村寿之シェフと一緒に、新たな郷土料理の良さを料理で伝え、生産者と消費者の心を繋ぐ空間を創造していくことをコンセプトに「感謝の野菜畑」(47都道府県)というイベントを通じて、農家生産者と消費者を結ぶ取り組みも始めています。

また、健作さんがスタートさせる起業ビジネスは、バイオプラスチック(環境ビジネス)の分野。すでに実家の工場では研究を進めていますが、この分野の難しいところは、環境への貢献については優れていても、研究がまだまだ浅いため耐久性に課題があることと、単価が高いので普及しづらいところです。

これからはいくら環境負荷が低いものを作っても、大量生産、大量放棄をし続ける社会では、結局ゴミを増やし環境問題を改善することはできません。しかし、これらの課題は従来までの考えであり、ヨーロッパなどの環境先進国では、社会の構造を変えるような動きがあるのも事実です。

1836_sub6

一番の課題は、「社会の意識を変えること」だと考え、現在はまずアウトドアなどの自然を心より愛する方や、問題意識をもって取り組んでいる人たちと繋がり、これからバイオプラスチックの価値を理解してくれる人を増やす活動をしています。加えて今後は、優れた技術をもっている中小企業の支援も積極的に行いたいと意気込んでいます。

セルフターンは、自分たちにぴったりな言葉

世の中で一般的にいわれている「安定」という言葉。多くの方は何が安定の軸でしょうか。 そして、「幸せ」の定義。2人ともに消防士、看護師という命に関わる職業を経験したからこそ、「自分らしく生きる」を最優先に、自分に嘘をつかずに生きたいといいます。

東京だから、地方だから、わたしだから、あなただからできない…ではなく、場所や常識に捉われずに挑戦し続けたい。2人にとっていつか授かるであろう子どもに、「両親が自分らしく生きている背中を見せて、子どもにもそんな生き方をして欲しい」と、きらきらした目で語ってくれました。

(※1)北竜町ポータル 日本一を誇るひまわりの里
東京在住のカップル・ひまわりの里で結婚式

久保田一美

久保田 一美

MY STORY K.K. 代表
企業研修講師、女性活躍コンサルタント

キャリア実績のある研修講師として、女性活躍推進やダイバーシティ、リーダーシップ、時間管理や仕事術、ITと人による生産性向上を推進するべく、企業での研修やコンサルティングを行う。また働き方やキャリアに関する専門誌連載、様々なオンライン媒体での専門家執筆など、人材育成に関する教材開発なども多く手掛ける。仕事も家庭もプライベートも楽しむQOL(Quality of Life)を大切に、2017年4月号「PRESIDENT WOMAN」誌にも、「私の働き方」で取材を受け掲載される。ライフイベントを見据えながら働く女性からのキャリアカウンセリングにも強みを持ち、実績多数。

このエントリーをはてなブックマークに追加

FEATURE

特集

サムネイル
サムネイル
サムネイル