子どもとママを救う!医師から起業家の道への挑戦

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子どもとママを救う!医師から起業家の道への挑戦
2018/04/30 (月) - 07:00
加藤 晶子

医師という安定した職業から一転、オンラインで医師に相談できるサービス、「小児科オンライン」を立ち上げ、起業家への道を歩むことになった橋本さん。背景には、小児医療の現場で感じた、孤立しがちなお母さんを応援したいという強い気持ちがありました。起業家と医師という両面から、熱い思いを語っていただきました。

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株式会社Kids Public 代表取締役社長
橋本 直也(はしもと なおや)

2009年 日本大学医学部卒
2009-2011年 聖路加国際病院にて初期研修
2011-2014年 国立成育医療研究センターにて小児科研修
2014-2016年 東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻 修士課程
2015年12月 株式会社Kids Publicを設立。「小児科オンライン」サービスを立ち上げる。
2015年-現在 都内小児科クリニックに勤務しながら、社長を務める

医療現場で感じた違和感を解決する手段としての起業

――最初から起業しようと思っていたわけではなかったのでしょうか?

最初はまったく起業ということは考えていなかったんですよ。医大で6年間学び、そのあと小児科医として5年間病院に勤務しました。大学5年生のときに小児科医になることは決めていて、そのまま小児科医の道を進みました。

そして、医者として5年間勤めている間に、いろいろな課題が見えてきたんです。たとえば、お子さんが鼻水を出しただけでも心配して病院に来る方がいます。でも、その軽い症状でもなぜ病院にきたのかという背景をみていくと、お母さんが地方の出身で東京で地縁もなく、とても心細い思いをされていて、どうしていいかわからず不安で病院を訪ねた、というケースもあります。

このように、純粋にお子さんの症状をみていただけでは分からないお母さんの孤立という課題も、診察をするうちに見えてきたんです。問題の上流、つまり社会構造の課題をみていかないと、根本的な解決はできないだろうと考えました。子どもは社会的に弱者で、社会情勢や家庭環境の影響を受けやすい存在です。その子たちの健康を守る上で、病院で病気になった子どもたちを待っているだけでは足りない何かがあるのではと感じるようになりました。

――そこから起業という選択肢が見えてきたのですね

そうですね。現代は、予防接種などの進歩や衛生状態の改善で、重症な感染症は減っています。
一方で、報告しやすい環境が整ってきているという要素もありますが、親の孤立による虐待、発達障害、不登校、肥満、アレルギーなどの問題が増えているんです。こういった問題を解決するには、家庭や保育園での様子や生活習慣に触れる必要があるのですが、病院で待っているだけではなかなか達成されないことがあります。

「小児科医がいる場所に子どもたちが来るのではなく、子どもたちがいる場所に小児科医がいる」
そういう世界を実現するために、インターネットがもつリーチ力、拡散力は大いに活用できるのではないかと思いました。その思いを実現するために、起業しようと決めました。

――医師とはまったく違う世界に飛び込むことに不安はなかったのですか?

不安はもちろんありました。でも、自分のやりたいことを実現するための手段としての起業だったので、足りない知識やネットワークなどは、あとから学んで身につければいいかという気持ちでスタートしました。

「起業する人」というと、私の中では、ビジネスを大きくして成功者になることが最優先というイメージが強くありました。そういう起業のスタイルは自分には向いていないと思っていたので、選択肢として考えていませんでした。
しかし、大学院在学中、ある友人との出会いを通して、それは誤解であったことに気づかされました。彼は社会を変えたいという思いで起業という道を選び、社会をよくしようと頑張っていたんです。やりたいことを叶えるための起業のあり方もあるのだと、そのとき初めて知り、起業に対して前向きになり、やってみようと決めました。

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社会で子どもを育てていくことの大切さ

――小児科オンラインのサービスについて、教えていただけますか?

平日の18時~22時までの間、LINEや電話で小児科医に気軽に何でも相談できるサービスです。0歳~15歳までのお子さんに関する相談に対応しています。サイトにアクセスいただき、10分の枠をご予約いただきます。開始15分前まで予約できますので、空いている枠があればすぐに相談できます。チャットやテレビ電話も利用し、写真や動画でお子さんの様子を実際に見ることができますので、対面に近い感覚でご相談いただけると思います。

また、オンラインですので、日本全国または、海外にいても使っていただけることが、メリットです。

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実際の相談の様子

――どのようなことでも相談できるのでしょうか?

はい、大丈夫です。お母さん(お父さん)の応援というのが大きなコンセプトですので、子育ての不安に寄り添いたいという気持ちが強いんです。特に目立った症状がなくても、なんでも気軽に聞いていただいて、信頼できる回答をお伝えして、お母さんにほっとしてもらえることが一番に目指していることです。

「キッズパブリック」という会社の名前も、子育てをパブリック(社会)で見ていく必要があるとの想いからつけました。「子育てには村が必要」というアフリカのことわざがあって、それが大好きなんですけど、個の家庭だけに子育ての全責任を負わせるというのは、無理があると思うんですね。だからこそ、社会としてあなたのお子さんが生まれたことを歓迎するという気持ちを伝えていかないと、お母さんもしんどいので、そういう思いを込めて会社の名前も付けました。

私たちはみんな味方なので、ふさぎ込まずに、どんな些細なことでもいいので聞いてほしいと思っています。現在、37名の小児科医で相談を受け付けています。みんな想いに賛同してくれている仲間ですので、どんな相談でも快く聞いて、回答してくれます。

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小児科オンラインで対応いただける小児科医の方々

目指すは、限りなく負担ゼロで利用できる人を増やすこと

――今後、小児科オンラインをどのように展開していきたいですか?

いま、「お母さんの負担をゼロに」というコンセプトのもと、ほとんどのユーザーは会社の福利厚生や付帯サービスとして無料で小児科オンラインを利用してくださっています。そうした連携を進めつつ、今後は、自治体に契約していただき、その地域の方は無料でご利用いただけるようなかたちでの導入を進めていきたいですね。お子さんの健康や子育てに関することなど、少しでも気になることを相談いただきたいと思っています。

また、実はいまテストサイトで始めている「産婦人科オンライン」というものがあります。 特に不安定になりやすい0歳の時期を、お母さんも心身ともに健康に過ごしてもらう意味でも、妊娠期からのサポートの必要性があり、立ち上げました。

いま、産前産後の切れ目ないケアが非常に重要といわれていて、妊娠期からかかわることができれば、産後もサービスを使っていただきやすくなり、ケアがよりできると思っています。

2016年に発表になったのですが、東京23区における妊産婦の死因の第一位が自殺だという調査結果がありました。それはものすごくショックで、その時期を支えていかないといけないという思いが強くなりましたね。

――最後に、やりたいことに一歩踏み出せない方へのメッセージをお願いいたします

私が最初に始めたときも、Wordpressというサービスを活用して自分自身で仮サイトをつくって始めたんですよ。いまってネット上に転がっている情報を集めれば最低限のものはできるんですよね。完璧なものを目指して起業しようと思うと尻込みしてしまいがちですが、最初はできるだけ小規模に、まずは身のまわりのものをかき集めて始めてみることをおすすめします。

当事者に会いに行って話を聞いてみる、でもいいんですが、自分の心が構えない程度のものを小さく始めると一気に見える世界が変わると思います。だめだったら、また振り出しに戻ればいい、くらいの気持ちでやってみるといいと思います。

【参考】
小児科オンライン
産婦人科オンライン(テストサイト)

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加藤 晶子

国家資格キャリアコンサルタント

銀行・株式会社リクルートキャリアでの人事・営業経験を経て、2011年にキャリアカウンセラーとして独立。若年層のキャリア支援を強みとし、今までに3,000人以上の就職・転職支援実績を持つ。2015年からの2年間はNPO法人で就業。好きなこと・得意なこと・情熱をかけ合わせた、心から輝ける場所を見つけることが得意。現在は、主に20代~30代向けに、ライフワーク実現のためのワークショップ開催・個人カウンセリングを中心に活動している。

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