起業前に知っておきたい個人事業主の経費について
渡部 幸
2018/12/14 (金) - 12:00

個人事業主として起業すると、毎年確定申告を税務署に行わなければなりませんが、その際必要経費として申告可能なものがあります。今回は、どのようなものは経費にできて、どのようなものはできないのか、起業したい人が知っておくと役立つ知識を解説します。

申告可能かどうかの判断に必要な観点

いままで事業主として確定申告を行ったことがない人が誤解しがちなのは「領収書があれば何でも経費にできるわけではない」という点です。分からない場合は「これは経費にできますか?」と税務署に聞くこともできるのですが、そこで必ず返ってくる言葉が次の2つです。

1.収入を得るために必要な費用なのかどうか

2.「家事関連費」については、実態に即しているかどうか

逆の見方でいうと「必要経費にしていいかどうか」は自分のモラル次第で、非常に明確な白黒つくようなガイドラインはありません。私自身も個人事業主として何年も青色申告を続けていますが、後で税務署にもし質問されたときに、「経費にした理由をきちんと説明できるかどうか」を基準として決めています。

「家事関連費」について

では、もう少し詳しく見ていきましょう。先ほどの「家事関連費」というのは、自宅を事務所にした場合に多く発生する費用のことで、家賃や水道光熱費、携帯電話代・インターネット接続料などの通信費のことを指します。

こういった費用は、仕事でも私用でも使っている場合、「すべて経費」とは認められません。あらかじめ仕事で使う割合を決めておき、「按分」で何割かを経費として計上することができます。家賃だけでなく、住宅ローンの利息も使用割合によって経費にできます。割合は自分で設定することになり、厳密な規則はありません。税務署で聞かれた場合に妥当となる範囲であれば大丈夫です。たとえば2部屋のうち仕事部屋として1室を使っている場合は半分の50%、などとします。

また、同じ事務所家賃関連でも、仕事用に事務所を借りた場合は按分ではなく、全額必要経費にできますが、保証金や敷金は解約時に戻ってくるので、資産計上となります。退去時に返却されず、修理代などに使われた場合その分はすべて経費にできます。携帯電話代は、これは仕事用、と決めれば100%経費にすることができます。

「旅費交通費」について

では、旅行についてはどうでしょうか。それが仕事の取材など、仕事に使う目的のものなら経費にできます。もちろん日々の交通費は仕事上の行き先であれば経費にできます。どちらも何の目的でどこに行き、何を得たのか、細かいメモを手帳などに書いておく必要があります。特に交通費は領収書がなくても計上できますので、明細を月ごとに一覧表にしておくとよいでしょう。

お茶代、食事代は?

最近はノマドということで、外のカフェでノートパソコンを持って仕事をする人も多く見かけます。1人でお茶を飲んだとしても、そのために払ったものについては、仕事に必要だと説明ができるので経費計上が可能と考えてよいでしょう。

また、取引先の担当者や仕事の仲間と喫茶店で打合せをした、打合せしながら居酒屋で一杯飲んだ、というものについても、仕事上の経費として「打合せ会議費」や「接待交際費」となります。ワリカンにしたとしても、きちんと領収書をもらっておきましょう。接待交際費にする領収書には打合せ相手の名前や人数、内容などをメモしておくと、もし聞かれた場合でもしっかりと説明ができます。

資料代やセミナー受講料、スーツ代は?

「仕事に必要かどうか」という観点での判断になりますので、仕事で使う情報収集のための新聞代、書籍代などは「新聞図書費」として、仕事に直接必要なセミナーや研修受講料は「研修費」として必要経費にできます。ただし、ファイナンシャルプランナーや行政書士、など資格を取得するための受講料は、その資格が個人に帰属する一身専属性という考え方のもとに経費とはなりませんので、注意が必要です。

仕事に使う、という意味でスーツ代は経費にできそうですが、そうは認められません。経費として認められるのは、明らかに仕事でしか着ない制服や作業着のみとなります。ただ、「絶対にこのスーツは仕事でしか着ないものだ」と税務署が認めれば経費となる場合もありますので、職種によっては交渉の余地はあります。

起業前に調べておこう

こういった経理処理を税理士の人に依頼することもできますが、起業したばかりのときには自分で処理することが多いでしょう。年明けからの確定申告の時期になって慌てることがないように、起業する前に、どんな会計ソフトを使うのか、書籍などを調べて処理ができるようにしておくと後で楽です。申告前に相談がしたい、という場合には小規模事業主のための地域の青色申告会に加入するという方法もあります。どちらにしても、起業時点でどうするか、決めておくことをお勧めします。

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